キャラクターの日常観について
面白い作品とは? キャラクターとは?
プロアマ問わず、作家であれば誰しもが自問自答しているかと思います。
かくいう私も同じでね。
処女作を執筆している頃はそんな悩みとは無縁だった訳ですが、公募⇨落選以降は頭を抱える日々を過ごしているのです。
色々と作品や指南書を読んで自作に取り入れてみたものの、結局判明したのは安易なアウトプットは危険であるという事でした。
ストーリー指南によって基礎は固まったものの、肝心な建物はそこら辺によくある形。実際に出版社から送られてきた書評は『オリジナル性がない』という内容でした。
これはどうしたものか、真剣に悩んだ結果。
私の中でとある結論に結びつきました。それは、想像する視点の転換。
すなわち、創作論そのものを独自解釈してみるという事です。
創作する人間にとって、ある意味基本中の基本に立てた気がします。
創作論を自分の世界に当てはめる
「三幕構成」「キャラクターアーク」「嘘と真実」「サスペンス」
世にいう脚本術やストーリーの法則は完全に確立されたものであり、その大元は万人にとっての良作を要素分解したものでもあります。
問題は要素分解するにあたって、各要素をどのようなカテゴリに分けるのか。本という形になっている以上、より人に伝わりやすくなるよう論理的にしている事でしょう。単に理解するだけならそれでいいでしょう。
しかしながら、作り手である以上は理解からさらにもう一歩踏み込まなければなりません。
それは己の感性に従う事です。
論理を理解した上で、自分はこう思う。
論理を超えたところにある自分の想いを載せてみるのです。
結果的に、それが誰かにとっての新しい論理になります。
そして反対意見や別解釈によって新しい論理が紡がれていく。
こうして見れば、人類はこうして文化を発展させたのかもしれませんね。
キャラクターの日常観
さて、ダラダラと書いてきましたが本題です。
ここからは私なりの解釈を連ねていきます。ただ、一種の脚本術には則した内容にはなっておりますのであしからず。
作品の構成要素として挙げられるのは、主に3つあると思います。
ストーリー(プロット)
舞台(歴史・文化含む)
キャラクター
これらの要素が複合的に噛み合いながら物語は進展します。
その中でもキャラクターは特に重要な要素です。
自分ではない誰かが起こすハプニング、サスペンス、非日常。
ワクワクとドキドキが胸いっぱいに広がるこの感覚は堪りません。
そのような感覚を第一線で生み出してくれるのが、キャラクター達です。
彼らの感情の起伏や戸惑う様子、困難を脱して勝利する瞬間に、私たちの心は踊ります。
そして、起伏を生み出すためには先に平場を定めておく必要があります。
その平場こそがキャラクターの日常観という訳です。
キャラクターにとってあるべき日常。
恋と青春溢れる学園生活だったり、ミュージシャンを夢見てはバイトに精を出す日々だったり、ギャンブルに溺れて自堕落に過ごしていたり、魔王を倒すために冒険中だったりするのです。
そう、彼らには彼らの日常があります。私たちと同じように。
ただし、私たちとキャラクターを分けるものが一つだけあります。
それはキャラクター達の日常は容易に瓦解するということです。
日常の瓦解こそが面白さの源流
日常が瓦解するからこそ、人は物語に惹きつけられます。
キャラクターたちが非日常へと落ちて行き、日常へ戻ろうともがく姿に興奮とトキメキを得るのです。
そこから最後までの展開をどのように調理するかは作家次第ではありますが、ラストシーンへ向けた選択肢は二つあると思います。
瓦解した日常に戻るか否か。
非日常で新たな真理を得て、非日常を日常とするか
非日常から脱出し、元の日常で平穏に暮らすか
貴方のキャラクターは最終的にどちらを選びますか?
そして選んだ結果どうなりますか?
主人公にとっての日常を決め、最終的に瓦解した日常に戻るかどうか。
これは私が物語を作る上で一番最初に決めていることです。
この内容を基盤に、舞台・設定・プロットを深めていきます。そうして一つの作品が完成するのだと思います。
だからこそ、キャラクターの日常観を定めておくのはとても重要なのです。
なんたって物語の基礎となる部分ですから。
日常と対になる非日常の設定
さて、日常の設定は終わりました。
そうしたら非日常の設定も容易でしょう。
なぜなら非日常とは日常の真逆。対の概念なのですから。
学園生活が一転、生死を問わないバトルロワイヤルに。
バイト生活から一変、大物ミュージシャンの道へ。
ギャンブル三昧からへヒットマンに追われる日々に。
ついに出会った勇者と魔王は恋に落ちる。
とまあ、このように。
皆さんもどこかで見聞きした展開でしょう。
とはいえ先ほどは容易でしょうなんて書きましたが、実際に作る側に回ると解ります。
これ、とてつもなく大変
市場に溢れる作品と被らず
過去の作品もやっていない挑戦をして
かつ、面白みを味わえるよう工夫を凝らす
ムズイ!
正直ここまでハードルが高いとは、執筆当初の私も思いもしませんでした。
しかしながら、事前に日常を定めたことで方向性は見えてくるでしょう。
貴方自身の日常という基盤の上に、非日常を積み上げるのです。
それはもうコツコツと!
大事なのは日々の発見と気づきです。
発想のきっかけもまた、私たちの日常に潜んでいるものです。
些細でもいい。僅かでもいい。
ゆっくりと一歩ずつ、しかして着実に前進するように。
そうやって面白い物語を紡ぎましょう。
未だ路傍の芽でしかない私ですが、いつか花咲くことを目指して、今日も明日も筆を執ります。
ご拝読ありがとうございました。
十条建也