管長日記「楽しみ、その中にあり」解釈20241111
花園大学出身の廣瀬順子さんがパラリンピック女子柔道で優勝、そのセレモニー、記念対談を行ったこと。視覚障害になって、花園大学に入ったという。そのあと、近所の柔道道場で練習を継続し、リオで銅、パリで金という。ちょっと想像したのだが、よく落ちこんでだめにならなかったものだと思う。「楽しんで」という言葉が印象的だった。
構成:
1.禅文化研究所のYoutube動画
2.花園大学講座「禅とこころ」のこと
3.バリのパラリンピック女子柔道金メダルの廣瀬順子さんとの対談
11月4日政道徳門老師の歴住開堂の翌日11月5日も、忙しい、ということ。京都出張は日程を調整しているとのこと。
Youtube動画はコロナ禍でそうするしか布教の手段がなくなったので取り入れたと思うのだが、今の忙しさの要因になってしまったが、現在最も有効な布教活動、広報の手段であろう。
■1.禅文化研究所のYoutube動画
「十月は、禅文化研究所では六十周年の記念事業があったので、撮影が出来なかったのでした。久しぶりの撮影となりました。」
やはり、京都出張のタイミングのためだろう。
「この墨蹟紹介、ただいま禅文化研究所所蔵の墨蹟について、その読み方、意味内容、そして書いた人物がどんな人なのかを解説している動画であります。ご覧くださる方はあまり多くないのですが、墨蹟に興味のある方にとっては、良いことだろうと思って、なんとか頑張って継続しています。
書と画とを交互に紹介していますが、今回は、書であります。
円覚寺の中興大用国師の一行書を紹介しました。これは数ある大用国師の書の中でも逸品といってよい墨蹟であります。大用国師のご生涯も解説しました。」
この動画の墨蹟紹介は、筆者としてはとてもありがたい。本を読んでも、どうも勘どころがわからないのだが、話を聞くと、なんとなくでも分かる。
いつかまとめて、墨跡や画の歴史など解説も見てみたい。
「それから、~今回から新シリーズとして、「山田無文老師の『般若心経』に学ぶ」と題して動画を撮影しました。般若心経をみなさんと一緒に学んでゆこうという企画であります。
禅文化研究所発行の山田無文老師の『般若心経』という本があります。~般若心経の一節をとりあげて、それに対する無文老師の言葉を紹介し、それに私が言葉を添えるというものです。」
撮影は1時間、と。撮影だけ現地で行い、検討は事前にやっておいて、撮影までの準備も研究所でやっておいたのだろう。
■2.花園大学講座「禅とこころ」のこと
「月に一回(、花園大学)で講義をしています。今期は、「禅僧の逸話に学ぶ」と題して講義しています。
第一回は達磨大師の逸話を紹介しました。
二回目は唐代禅僧の逸話に学ぶでした。
三回目は、宋代の禅僧の逸話に学ぶでありました。
四回目は、鎌倉時代から室町時代にかけての禅僧の逸話に学びました。
そして今回は江戸時代の禅僧の逸話に学ぶです。
江戸時代で誰を取り上げようかとずいぶん悩みましたが、鈴木正三と盤珪禅師と白隠禅師とを取り上げました。」
こちらは花園大学のYoutubeにアップされている。毎回楽しみにしている。
■3.バリのパラリンピック女子柔道金メダルの廣瀬順子さんとの対談
「控え室でお目にかかって一番感じたのは、笑顔の素敵な明るい方だということでした。」
柔道が題材になっている少女漫画の主人公に憧れ、小学校五年生の時に柔道を始める。
中学校、高校も柔道部に所属、インターハイにも出場。(高校卒業と同時に柔道はひと区切り)
広島の大学に入学、一回生のときに病気で中退。リハビリセンターにいた職員さんが、花園大学の卒業生で、花園大学では目の不自由な方も支援してくれるという話を聴いて、花園大学に行く。
花園大学には柔道部はないので、大学三年生の時に視覚障害者柔道をはじめ、近所の道場で練習。
大学卒業後に柔道を仕事として就職、それからパラリンピック出場を目指す。
リオのパラリンピックでは銅メダル、東京では五位入賞、今回のパリでは金メダル(日本初)を獲得。
「学生へのメッセージをお願いしたところ、あきらめずに頑張ることの大切さを、心を込めて話してくれました。
頑張ったら頑張っただけの意味があると語ってくれました。」
ほんとうにそう言っているように思う。これは簡単なことではない。「あきらめる」というより、よくしようと思って、変更や、また自ずと変わっていってしまうことが多いと思う。
老子から廣瀬さんへのお祝いの色紙
「かねてから楽しむという言葉が入ったのがいい」との要望。
「楽しみ、其の中に在り」(『論語』「楽亦在其中矣」)
論語に「粗末な飯をたべて水を飲み、うでをまげてそれを枕にする。楽しみはやはりそこにもあるものだ。」という言葉があります。
廣瀬さんは、柔道では笑ってはいけないと教えられていたそうなのです。
しかし今のご主人と出会われてから柔道を楽しむように変わったのだと仰っていました。
同じく視覚障害者柔道をなさっているご主人との出会いは、廣瀬さんにとってとても大きかったのだと思います。
笑ってもいい、楽しくやったのだというのです。
これは素晴らしいことだと思いました。
素敵な笑顔は楽しんでおられるからだと分かりました。
それで素晴らしい成績をおさめられたのです。」
「論語」述而第七15
子曰、飯疏食飲水、曲肱而枕之。楽亦在其中矣。不義而富且貴、於我如浮雲。
子曰わく、疏食を飯い水を飲み、肱を曲げて之を枕とす。楽しみも亦其の中に在り。不義にして富み且つ貴きは、我に於て浮雲の如し。