因縁と華厳の四種法界

世界海塵數因緣具故,一切世界海成
(世界海の塵の數の因緣が具わる故に、一切の世界海は成ずる。)

諸佛子!當知一切世界海,有世界海塵數因緣具故成,已成、今成、當成,所謂:如來神力故,法應如是故,眾生行業故,一切菩薩應得無上道故,普賢菩薩善根故,菩薩嚴淨佛土願行解脫自在故,如來無上善根依果故,普賢菩薩自在願力故,如是等世界海塵數因緣具故,一切世界海成。

諸の佛子よ! 當(まさ)に知るべし。一切の世界海は,世界海の塵(じん)の數(かず)の因緣有りて具わるが故に成ず。已(すで)に成じ、今成じ、當に成ずべし。所謂、如來の神力の故に,法が應(まさ)に是の如くなるが故に,眾生の行業の故に。一切の菩薩が應に無上道を得べきが故に。普賢菩薩の善根の故に。菩薩が佛土を嚴淨するに、願行解脫について自在なる故に。如來の無上なる善根の依果の故に。普賢菩薩の自在願力の故に。是の如き等の世界海の塵の數の因緣が具わる故に,一切の世界海は成ずる。

佛馱跋陀羅『大方廣佛華嚴經』卷第三、盧舍那佛品第二之二より。

因縁の捉え方として、このような見方も心にとどめておきたいと思う。
十二因縁は、無明、形、色、名識、六處、触、受、愛、取、有、生、老死だったか、これはどうしても人が、煩惱を持つこととかの、心理的なことが投影された言い方になっている。
上記の華嚴経引用は、「如來神力故,法應如是故,眾生行業故,一切菩薩應得無上道故~」と因縁をいう。勿論、ここに因縁のプロセスは示されないが、人から離れたところがある。如來や菩薩の存在を普遍化している大乘の良さと思う。

中村元『『華厳経』『楞伽経』』(東京書籍)を参照しているが、この因縁の連鎖は法界縁起と呼ばれる。華嚴宗では四種法界として、事法界、理法界、理事無礙法界、事事無礙法界が説かれる。中国で表現されたようだ。
まず法界とは「真理そのものの現れとしてのの現実の世界」をいう(『仏教辞典』岩波書店)。
事は現象面で、いろいろ異なった差別のある姿。
理は真理、事の奥に隠れている、人には見えないこと。理法界は本来の世界、理法の世界。
これらは必ずしも対立していないと、お互いが溶け合っていてとどこおることのない、無礙な繋がりがある、というのが理事無礙法界。
さらに、現象と理、本性は対立せず、あらゆる事実がお互いにとどこおることなく、妨げることなく、融合している、という境地を事事無礙法界という。

このことは、実際の現象と現象をつないで因縁を表現できるということだろう。また理論とか本質的概念で表現できる、ということでもあろう。

華厳経を読んで救われるかはわからないが、思想的には興味深いし、禅の理解にも有用だろう。

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