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ガチ素人の廃線・廃道探訪録〈小峰隧道①〉

【追記:2023/02/05】続き公開しました。

 あけましておめでとうございます!!
 いつも読んでくださっている方は,本記事を読んでいただきありがとうございます。本年も自分の好きなことや興味関心のあることについて不定期にだらだらと更新を続けていく所存ですので,ふと思い出した時に見に来ていただけると幸いです。今年もよろしくお願いします。
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 前回までの記事を読んでくださった方はありがとうございます。そうでない方ははじめまして。前回はあきる野市に現存する異形のの旧隧道,満地トンネルを探訪しました。今回は東京都の旧隧道第二弾ということで,八王子市とあきる野市の境目に存在する旧隧道をご紹介いたします。例によって今回も,だいぶ浸かった写真,曖昧な記憶,並びにクソ雑魚机上調査が多量に含まれますがご了承ください。

1.新小峰トンネルと謎(いつもの)の脇道

 さて,時は2021年9月某日。前回ご紹介した満地トンネルを探訪した後,さらに50分ほどチャリを漕ぎ八王子市に存在する新小峰トンネルにたどり着きました。

①新小峰トンネル¹⁾
延長656m,幅員10.25m,限界高4.7m,竣工年度1999年

 この新小峰トンネルがあるのは東京都あきる野市と八王子市を隔てる標高288mの小峰峠。八王子方面からあきる野市,さらに北の青梅市,果ては奥多摩にまで向かうための第一歩の峠道として,小峰峠を抜けるルートはかつてより地元民に重宝されているようです²⁾。また同じく八王子方面から奥多摩へ向かうルートとして国道411号が峠の東約5㎞に走っていますが,その渋滞時の迂回路としてもよくつかわれるそうです²⁾(国道411号は前回紹介した新満地トンネルのある路線ですが,さすがは国道,以前から交通量は多かったみたいですね)。

google mapより拝借。赤線がざっくり国道411号ルート,青線が迂回ルート(推定)。
赤星地点にあるのが小峰峠。

 そんな小峰峠を貫く本トンネルは都道32号・秋川街道上にあり,新満地トンネルよりもさらに新しい平成11年竣工。坑門の衣装はザ・平成といったもので,石材風タイルで装飾されたのっぺりした坑門壁面に,若干横に長い馬蹄形の断面。扁額は何故か緑色で,金色文字で「新小峰トンネル」と刻まれています。車道幅員は新満地トンネルの約2倍にもなる驚異の約10m!その幅の恩恵で洞内にも歩道が完備され,自転車もこのトンネルで峠を抜けられるのは好ポイント。
 さてそれでは早速新小峰トンネル…ではなく,トンネル手前から左側に目を向けてみると,

①新小峰トンネルの手前から左に道が分岐している。出で立ちはいかにも車道だが,入り口には車止めがあり自動車は入れない。
入り口には「180m先🚫完全通行止め」および「この先↑170m応急給水拠点」の文字が。
下の看板には「東京都水道局」の記載も。この先に水道局の施設があり車両の出入りもあるため,簡易的な車止めとなっているようだ。

 トンネルから踵を返して反対側方向に登っていく脇道がありました。備え付けられている看板にはこの先には東京都水道局の管理する配水場がある旨も示されており,この道はその施設への専用道的な使われ方をしているようですね。ご丁寧に自動車の侵入を防ぐ車止めまで用意されています。
 しかし下の地図を見るに,施設自体はこの道に入り坂を登り切ったところにあるようですが,道はその地点からさらにUカーブをキメて峠に突っ込んでいくように書かれています。上に描かれている標識が「全面通行禁止」ではなく「車両通行止め(歩行者以外)」となっているのも気になりますし,ささっと様子を確かめに行きます。

車止めを超えると,道は急カーブ。結構な登り坂で登っていく。
振り返ってもと来たほうを撮影。植物が旺盛にガードレールを侵食している以外は,当たり前だが電線も生きてるし舗装やガードレールも綺麗で現道と遜色ない。
少し登って進行方向を撮影,雑草で縁取られた道路真ん中の緑のラインは白線がはがされた跡だろうか?もとは公道として使われていたのかもしれない。
植物のはみ出し方や舗装部の轍の薄さから,手入れはされているが使用頻度は少ないらしい。
②しばらくすると道は再度急カーブで右へ反転。そこに入口で予告されていた施設「応急給水地点」があった。
この施設は災害時万が一断水した際,水を配るために,水道水の一部を貯めておく場所らしい³⁾。水をくみ上げるポンプに使う電気まで自家発電できるらしく,災害時は頼りになりそうだ。
ちなみにこの配水場は峠と低地のちょうど境目に立地している。
眺めがよさそう(小並感)
※画像はgoogleストリートビューより拝借。

 さて以前より予告されていた施設にはたどり着いたわけですが,道はここで終わらず峠に向かって登りを続けます。入口の表示の通り,ここからすぐのところは全面通行止めとなっているはずですが…

③①地点から180mほど進んだ地点。
冷たい鉄のゲートと藪が行く手を完全に遮る。

 …これは通行止めですわ。入口の簡易的な車止めとは対照的に,道は今後絶対に外されないであろうゲートでふさがれています。

配水場までの道は私道となった際の補修なのか路面が舗装され直していたが,施設を過ぎた途端にそれもなくなる。おそらく本来の道路標示が復活したとともに荒廃の度合いが一段階上がる。

 左右の藪も一層勢いを増し,両側にあるであろうガードレールはもはや完全にその姿を藪の中に埋めようとしています。一応,車道部のゲートは開閉式になっていますが,当然といえば当然ですが,最近になってから開かれた形跡はありません。
 「新」小峰トンネルという名称…トンネルの脇道から分かれ峠を登っていく元公道っぽい車道…これらの状況証拠からも明らかなことに,結論から言えばやはりこの道も,新小峰トンネルができる以前に自動車での小峰峠越えを一手に担う峠道でした。ということはやはりこの先にも,「新」じゃないほうのトンネルがあるはず…これは見に行かねば!

 となると気になるのは…果たしてこのゲートを超えていいものかどうか。入口の車止めに描かれていた標識に従うのであれば,歩行者自転車ならば普通に通行可能なはず。ゲート下部の標識も車両での侵入を禁止しているだけ(下の二輪車っぽいのはバイクで,自転車は大丈夫…なはず…)ですし,今見ると全然躊躇う必要はなさそうな感じ。

左側の歩道部は完全に雑草に阻まれているが,右側は普通に通り抜けられそう。
物理的障害も特にない。

 しかしこの時の,というか私は生来非常に憶病な生き物でして,探訪日は平日のため当然といえば当然ですが施設には人がおり,その人の目も気になり確証がない限りなかなかゲートの先に進む勇気が出ませんでした…。

平日の昼間に水道局の人間しか普段は来ないようなこんな場所でうろうろしている時点でだいぶ変質者なのだが…。自分の生まれ持った形質には毎日のように心底呆れさせられる。

 何かこう,「自転車は通っていいよ!」という確証が得られるような掲示物はないだろうか…(通常そんな都合のいいものは見つかりませんが)その答えを探して,おそらくあるであろう峠の反対側の入り口へと向かうことにします。

青線はここまでの探訪ルート,赤線は未踏ルート,①~③が撮影地点。
画像はgoogle mapより拝借。

2.新小峰トンネルを抜け八王子市側入り口へ

 そんなわけで折り返し再び新小峰トンネル前。峠の向こう側に恐らくあるはずの峠道の入り口を目指して,今回はちゃんと新しいほうも通り抜けます。
 というわけで,いざ入洞。

④新小峰トンネル洞内。さすが平成10年代完成といった感じで,洞内はめちゃくちゃきれい。

 あきる野市側から入ると,新小峰トンネルは大きく左にカーブしながら小峰峠を潜りぬけていきます。洞内も柵付きで大人二人がすれ違える程度の幅の歩道が完備されており,自転車はめちゃくちゃ快適ですね。実際,あきる野市側の取付道路は歩道が狭く車道もそこそこで自転車の肩身も狭い感じなので,この辺ではトンネル内が一番走りやすかったです。

⑤新小峰トンネルを抜けると,今熊山を水源とする川口川に削られてできた谷に出る。
両側を山地に挟まれた,長閑な風景が広がる。
画像はgoogleストリートビューより拝借。

 ここから4㎞ほど道なりに行けば山地を抜け,八王子市街に出られます。しかし今探しているのは,折り返し再び小峰峠に与するかつての峠道への入り口です。左側を注視しながら進んでいきましょう。

少し先に「50m先Uターン路」の看板が。
なるほど,思ったよりちゃんとしたUターン路だ。確かに間違って新小峰トンネルに入ってしまうと,元の場所に戻るにはかなり大回りして峠を迂回する必要があるので,このUターンは実際助かる気がする。画像はgoogleストリートビューより拝借。

 さらにそこから100mほど行ったところに,八王子市街側から見て右に分岐していく細い道を発見しました。

⑥googleストリートビューより拝借。
一見山に分け入っていく何の変哲もない道に見えるが…
数々の看板やら標識やらが行く手の現況を語ってくれています。
柱には「東京都」の文字。

 この先90mで「通行止め」,「幅員減少」の警戒標識に,控えめながらも設置者の確かな意思を感じる「五日市方面車両通行止!」の文面。とりあえず車両は絶対に通さないという雰囲気は峠の反対側の様相にも合致します。「五日市」というのは秋川市と合併しあきる野市となることで消滅したかつての五日市町の名残でしょうか⁴⁾(今でも地名としては残ってますが)。この看板ができたのはおそらく合併後でしょうし「あきる野市方面」と書いてもいいような気がしますが,小峰峠近辺の地元の方は合併後も「五日市」のほうが馴染みがあるらしく²⁾,ここでも五日市の名前を採用しているのかもしれません。

少し先には追い「通行止め」。
そしてその向こうは車2台はすれ違えなくない?ってぐらいに幅員が減少。
ここで通行止めにするなら幅員減少の警戒標識必要なくない?
道が本格的に峠に与し始めるというところで,車止めにより車道は遮られる。
画像はgoogleストリートビューより拝借。 ちゃっかりストリートビューもここまでは来ていた。

 というわけでそれらしい場所は発見できましたが,問題はここが通行可能なのかどうかですね。手前の標識が「車両通行止め」ではなく単に通行止めとなっていたのが不安ではあります。反対側の様子からするに,少し先で本格的な封鎖がありそうな気がしますが…

⑦八王子市側封鎖地点

「よし通れ」

 これは…通っていいヤツじゃな?前回の前回の満地峠の旧道と同様に,旧峠道が歩行者用道路として開放されているようです。やったぜ東京都!自転車はまぁ…押して歩けば大丈夫やろ。

3.峠に呑まれる旧道

 お墨付きももらったところで,さっそく進入します。
 ここから先隧道までの写真は動画から切り出したものがほとんどになりますので,ひどい画質やブレが多々見られると思います(動画作って上げようかなと画策していた者の末路です…)。あらかじめご了承ください。

ゲートの脇から内部に進入。
ゲートを過ぎた道は傾斜をつけつつ大きく左にカーブ。
何故かガードレールが緑色に塗装されているが,これはおそらく車両通行止め以降のもの。
入ってから少しの間左手の視界は開けていて,川口川のつくる谷とその向こうの山地を見渡せる。
が,すぐに木々にさえぎられてしまう。
道は下手に等高線に逆らうようなことはせず,
山肌に沿うように曲がりくねりながらじりじりと高度を上げていく。
峠の真ん中を貫くように伸びている現32号とは対照的で,時代を感じさせる。

 ゲートを過ぎてからも,道の状態はそれほど現道と変化はありません。一応歩行者道として今も現役であるおかげか,ガードレールやカーブミラー,その他の道路設備がしっかりと維持されています。路面も落ち葉こそ堆積していますが舗装が荒廃するということもなくきれいですね。
 ただ,これは廃か否かに関係ないことですが,自分の体感として…道が狭い!両側から草木が侵食し堆積した枯葉も相まって視認できる路面が減少していることも理由かと思いましたが,この道は約25年前まで現役の都道だったであろう道です。この道で片側1車線の2車線通行が行われていたと考えると,やっぱり狭いんじゃないかなァ,て感じがします。
 そして上の写真の地点にはこんなものが。

⑧警察がドリフトやローリングをやめるよう促す看板。
こういうワインディングを見ると,やはり走り屋スピリット的なアレが疼いたりするんだろうか。
ベコォとへっこんだ看板の説得力にはなかなかのものがある。

 こういう看板が立ってしまうぐらい,もっと言えば走り屋魂?的なのが刺激されるぐらいに,この峠道は曲がりくねっていますね。終始傾斜は緩やかで,少しずつ高度を上げていきます。

⑨少し進むと右手に立派な法面が出現。
両側はスギ?かヒノキ?のおそらく人工林が広がり,鬱蒼とした雰囲気。

 さらに少し進むと左手に謎の空間が出現します。

⑩左手に工事現場のような謎の場所が。塀の向こう側は人の気配も現役の気配もない。

 この場所,ちょっと調べてみたんですがほんとに分からん仕舞いでしたね…。新道建設時の資材置き場の跡とかでしょうか…もし情報お持ちの方がいらっしゃいましたらご教授いただけると幸いです。

左右の藪は一層深くなっており,どこまでがもともと路面だったか判然としない。

 さらに少し先で上を見上げると,峠の名を示す看板もありました。

「小峰峠」の名を示す白看。隣の鳥はなんだろう,市の鳥とかだろうか。

 ここまで旧都道は等高線に沿うようにしながら,麓から20mほど峠を登ってきました。しかし⑩地点を過ぎたころから道は峠に対峙するように直線的に進んでいきます。進行方向には峠が立ちはだかりますが,道は峠を乗り越えるには高度不足のまま,前方の暗がりに突っ込んでいきます。

 小峰峠に与する,長く曲がりくねった旧都道。その先に待っていたのは…

⑪小峰隧道 八王子市側坑門

隧道!しかも煉瓦と石材だ!!

3.今回の探訪ルート

 ここまでの探訪ルートはこんな感じ。

青線が探訪ルート,緑線が隧道。赤線は次回紹介ルート。
①~⑪が撮影地点。

 あきる野市側の封鎖地点まで,および八王子市側の小峰隧道手前までの合計約2㎞をご紹介しました。次回は小峰隧道,およびその先の取付道路を辿ります。
4.参考サイト
1)隧道データベース

最終閲覧日:2023年1月1日
2)「小峰峠」峠と旅ホームページ

最終閲覧日:2023年1月1日
3)「覚えてください!お近くの災害時給水ステーション(給水拠点)(一覧)」東京都水道局ホームページ

最終閲覧日:2023年1月1日
4)「五日市町」wikipedia

最終閲覧日:2023年1月1日

5.次回予告

 次回,小峰隧道編後編。

 かつて都道の峠越えを一手に担った大正隧道 ――

 ―― 一線を退いた小峰隧道の,今はどんなだ!


 中時間の閲覧お疲れさまでした。ほんとは年越す前に書き上げたかったんですが遅れに遅れましたので,取り急ぎ前半部分だけ公開させていただきます。もし興味がありましたら,次回も見ていただけると幸いです。

 それでは,またどこかで。

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