経済効果を最大化する売上予測:新規出店戦略への影響分析
前回のコラム(店舗開発実務担当者必見!高精度予測で得るビジネス上のアドバンテージ)では、店舗開発実務担当者の視点から高精度な売上予測の必要性とベネフィットについて解説をいたしました。多くの読者様から、精度改善に伴う具体的な経済効果についての考え方についてのご要望をいただいております。このご要望は、社内で売上予測プロジェクトを立ち上げる際、経営陣に対して費用対効果を説明する必要があるという、実務上の重要な課題から生じていることを理解しています。今回のコラムでは、予測精度改善がもたらす経済効果を具体的な数字を交えて解説をいたします。
1.新規出店評価の物件評価フロー
多くの企業様では、定量的なデータによるシミュレーションをベースに開発部員の経験で補完して新規出店時の評価を行っています(図1)。今までのコラムで解説した「売上予測」は、定量的なデータによるシミュレーションを指します(※以降、「売上予測」と呼びます)。売上予測の精度向上は、新規出店時の評価の精度向上に繋がります。
2.売上予測の精度改善が及ぼす効果
実際に売上予測の精度改善は、どの程度の経済効果を及ぼすのかをシミュレーションしていきます。
<前提条件>
経済効果のシミュレーションは、複雑且つ各企業様の状況によっても変動するものとなります。今回は、下記前提条件のもとシミュレーションを実施します。
・実施している売上予測の平均的な予測誤差は20%
・出店検討に値する候補物件は年間200物件
・1店舗出店に掛かるコストは5,000万円
・1店舗あたりの営業利益(平均)は1,000万円
・年間10店舗出店
・10店舗のうち、不採算店舗は2店舗(不採算店舗出現確率が20%)
・予測誤差が20%以内は正しい評価と判定(不採算店舗のリスクが低い)
<平均的な予測誤差10%達成による予測性能改善幅>
図2は、平均的な予測誤差が10%と20%の予測誤差出現確率を表したものになります。平均的な予測誤差20%の予測モデルでは、正しい評価ができる物件は全体の50%になります。一方で平均的な予測誤差が10%の予測モデルは正しい評価ができる物件は全体の78.7%となります。平均的な予測誤差20%の予測モデルと比較すると予測性能(正しく評価できる確率)は約1.57倍となります。
<予測性能改善による経済効果>
予測モデルの予測性能改善により、不採算店舗の出現確率は、20%→4.3%に改善されます(図3)。年間10店舗出店の場合、不採算店舗数は2店舗→0.43店舗となり1.67店舗削減されると考えられます。1店舗あたりの出店コストが5,000万円の場合、8,350万円のコスト削減となります。これに合わせて、機会損失(本来出店していたら収益が期待できた店舗)防止による経済効果が考えられます。候補物件母集団の質によって数値は変動しますが、ここでは出店数(10店舗)×予測性能改善幅(1.57倍)=15.7店の出店が可能と仮定します。出店数が5.7店舗増加することで5,700万円の経済効果が期待できます。不採算店舗削減と機会損失防止による経済効果は、約1.4億円と試算ができます。
3.まとめ
本コラムでは、売上予測の精度向上がビジネスに及ぼす具体的な経済効果に焦点を当て、その重要性と実際の影響を解説しました。企業は不採算店舗の出現確率を大幅に減らし、その結果、コスト削減と収益向上の両面で顕著な経済効果を享受できると考えます。売上予測精度改善のシミュレーションは、前提条件によって変動しますので、貴社の具体的な数値をもとにシミュレーションしたいというご要望がございましたらお気軽にお声がけください。本コラムが、店舗開発実務担当者にとって有益な洞察を提供し、より効果的な出店戦略を策定する上での一助となれば幸いです。
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