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SaaS企業の広告費が高い理由と解決策

この記事では、成長中の企業を対象としたSaaS企業が直面する広告の課題を俯瞰し、その解決策を提示します。なお、一般消費者向けのSaaSは対象外とします。

Saas企業を取り巻く環境



富士キメラ総研の発表によると、2023年、日本国内には約1,600社のSaaS企業が存在、市場は2023年に1.4兆円に、2027年には2兆円を越えます。

SaaS企業は、様々な業界において業務効率化やデジタルトランスフォーメーションを推進するためのツールやサービスを提供しており、その分野はERP、人事・給与管理、ローコード開発ツール、電子契約ツールなど多岐にわたっています。

その一方で、課題も多いです。参入企業増加、海外企業の増加により、Saas企業は厳しい競争にさらされています。また、人材確保や、資金調達など阻害要因があるため、成長が鈍化するリスクを常に抱えています。

広告の種類と相場


まず、どんな広告が利用できるのか全体を見渡します。

  • テレビ・新聞広告

東洋経済新聞によれば、テレビは40才代以上、新聞は50才以上が主なターゲットです。私の調査では、ローカルテレビは経営者の視聴率が低く、地方新聞は地域に根付いた企業経営者が購読しています。

私の顧客について言うと、経営者についていえば、全国ネットテレビは、ニュース・経済番組がターゲット、全国紙は日本経済新聞や業界紙がターゲットです。

メディア営業にヒアリングした結果、全国ネットテレビは、低くとも100万円以上、ローカルテレビは、70万円程度です。新聞は紙面サイズによりますが、全国紙は100万円程度、地方紙は全国紙の半額程度と考えてよいです。

業界紙は、購読者数によりますが、30万円から上と考えるとよいでしょう。

  • インターネット広告

Facebook、Linkedinがよく使われます。Facebookはきめ細かいターゲッティング、Linkedinは専門家や経営者が多く参加しているからです。

広告代行業者に聞いたところ、Facebook、LinedinのCPA(Cost Per Action、またはCost Per Acquisition)は、それぞれ2~3,000円、5,000~20,000円程度です。

  • 展示会・イベント

関西ビジネスインフォメーション株式会社によれば、展示会に出展する際の費用は、イベントの規模や開催方法によって異なります。一般的に、出展費用は50万円からスタートすることが多いです。

一方、オフラインの大規模展示会や特定の業界向けイベントでは、出展ブースの規模やオプションに応じて数百万円かかることもあります。たとえば、バイオ関連の展示会「BioJapan」では、スポンサーセミナーやプレゼンテーションを含む出展費用が77万円~132万円程度になるケースもあります。

展示会は、見込み顧客を獲得したり、既存顧客との関係を強化したりするための重要なマーケティング手段ですが、費用も考慮して戦略的に選ぶ必要があります。

  • 出版

商業出版の場合は無料です。
出版代行業者にヒアリングした結果、Kindleといった商業出版は、原稿執筆以外の表紙デザイン、体裁、フォーマッティング、出版手続きを発注する場合、70,000円~200,000円の費用です。

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広告は高い?その原因


株式会社WALTEXの調査では、SaaS企業の広告費は、売り上げの20%程度と言われ、利益を圧迫しています。その要因を分析します。

  • 競争の激化

冒頭に書いたSaaS企業の増加に伴う需要の増加により、広告費用が高騰しています。

  • 顧客獲得コスト

多くのSaaS企業は、顧客獲得用の商品と収益化の商品を揃えています。収益化商品に誘導するためには、新規顧客の教育や質問に対して丁寧に対応する必要があります。従って、収益が出て居ない顧客に対しても、投資が必要です。

  • マネタイズまでの時間

収益化された顧客に対しても、継続的な投資が必要です。年間のサービスでは年15%、月次サービスでは月3%程度が解約します。

その理由は、比較的容易に、他のSaas企業に乗り換えることが可能、ERPや顧客管理では、Excelに変換し、他社のサービスへの乗り換えが可能だからです。逆に、Excelなどの共通のドキュメントに変換できない場合、サービス性の低さから、購入者が減少します。

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SaaS企業特有の課題


SaaS企業のマーケティングを観察すると、広告費が膨らむ理由が、目に見えて理解できます。

● ブランド認知の低さ

大変失礼な言い方ですが、多くのSaaS企業は無名です。主な理由は、クラウドサービス利用率が7割程度と低いからです※。米国では9割強(※)と違いが明確です。その理由は、顧客企業が、自社向けのカスタマイズを要求する点にあります。いわゆる個別対応です。
※ 総務省調査、GOOGLEの調査による。

また、AZUREやAWSや関連企業のサービスといった、外資SaaS企業のシェアが高く、しかも先行して事業展開しているため、日本のSaaS企業が苦慮しています。

3点目は、事業のストーリーが無いことです。それは、会社情報を見て感じたことです。起業される方は、必ず社会を変化させる強い想いがあります。その想いが伝わらないのです。人は、機能や価格には心動かされない。IT企業の特徴であり、SaaS企業でも同じです。その結果、ファンは増えず、従ってブランド力が低い。

● 営業とマーケティングの連携不足

B2B企業共通の課題として、営業部門とマーケティング部門の乖離があります。顧客からの要望はすべて営業部門が管理、共通したニーズや商品の問題点も知っています。さらに、顧客との接点の豊富な営業人は、言外のニーズを言語化しています。例えば、ブロードコム社がVMwareを買収した際も、ある企業の営業部門は、AZUREやHyper-Vへの切り替え提案でチャンスを生かしました。

しかし、マーケティング部門は、このような現場ニーズの察知が遅く、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまいます。

● 目標が異なる

営業部門とマーケティング部門は、ボーナスや職級などの評価の基準が異なります。契約数や売り上げなどが基準になる営業部門は、半期ベースで結果を求められます。見込み顧客数、集客人数なども基準になるマーケティング部門は、より長いタイムラインで仕事を組み立てられます。

このような評価基準の違いが、行動の違いとして現れます。

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営業・マーケティングの連携不足なぜ起きる?


もっと具体的に、営業とマーケティングの食い違いの原因を突き止めてみます。

● 目標のミスマッチによるメッセージの不一致

マーケティングが生成するリードの質やターゲット層が、営業が実際に必要としている顧客像と一致しないことがあります。例えば、マーケティングが広範囲にリードを集めることを目標とし、より多くの見込み客を獲得するために幅広い広告を展開する一方で、営業は具体的なターゲット顧客層にフォーカスしている場合があります。このような状況では、広告のメッセージやアプローチが実際の営業活動と連携せず、営業チームにとって価値の低いリードを生み出してしまうことになります。

その結果、営業はマーケティングから提供されたリードを無視するか、対応に時間がかかるため、広告に投じられた費用が無駄になりやすくなります​(

● 広告の成果指標が異なる

マーケティングは広告キャンペーンの成功を、リード数やブランド認知度の向上といった指標で評価することが多いですが、営業は商談成立や契約締結を成果と見なします。この違いにより、マーケティングは「リード数を最大化する広告」を優先し、営業は「質の高いリード」を求めるため、広告のターゲティングやメッセージが営業にとって不適切になることがあります。

たとえば、マーケティングがリード数を増やすために広告を広範囲に打ち出しても、営業に渡されるリードの質が低ければ、リードのフォローアップが効果的に行われず、結果として商談に繋がらないことになります。これは、広告費が無駄になる可能性が高まります。

●タイムラインの不整合

マーケティングキャンペーンは長期的なブランド認知やリード生成を目的としていることが多く、その成果は時間をかけて見えてきます。一方、営業は短期的に売上を達成するプレッシャーがあり、すぐに成果を求めます。これにより、営業が望む「すぐに商談に繋がるリード」をマーケティングが迅速に提供できない場合、広告が効果的に活用されず、短期的な成果が得られないという問題が生じます​

● 広告予算の不適切な配分

営業とマーケティングが連携していない場合、広告予算の配分が不適切になることがあります。例えば、マーケティングがリード生成に大量の予算を投入しても、営業がそれをフォローアップしきれない、またはそのリードが営業にとって有用でない場合、広告に投資された資金が無駄になってしまいます。このように、目標が一致しないために広告の費用対効果が低下し、リソースが最大限に活用されない結果となります。

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営業起点マーケティングの勧め


マーケティングが結果を出すための、具体策2つを伝えます。

● マーケティングが売り上げに貢献するたった一つの行動

マーケティング部門がやるべきことは一つだけ。営業のエースと定期的な情報交換をしてください。営業の新人ではなく、バリバリのエースです。その人は、顧客の潜在的なニーズを知っています。その人から、一言でも、次に来るニーズが判れば、アタリです。その情報をもとに、マーケティング部門は、次の集客のネタを作ります。それを営業のエースに聞き、改善します。

● 売り上げを目標にする

マーケティング部門は、売り上げ/広報・広告費用、つまりROASを、成果目標に入れてください。売り上げの何%が、広告・広報の貢献かわからない、そんな反論があります。

これは、おおよそで良いのです。営業、広報、広告で、33%ずつでもよいです。正確に間違うより、不正確に正しいほうがより良いのです。これは、ウォーレン・バフェットの言葉です。

大事なことは、営業・広告・広報が同一の目標に向かって計画し、行動すること。全員がちがう方を向いていたら、船は前に進みません。

ブランド認知の向上

ここまで、営業とマーケティングの齟齬について書きました。広報についても課題があります。

かならずやって頂きたいこと。それは、会社情報の全面改訂です。ありきたりの情報、定礎のような石板ではない。あなたを事業に駆り立てた、どう社会をを変えたいか、そのためにあなたは何をし、社会の一部であり組織をどう変えてきたかです。

これをしっかり書いて、PRにも書き込みます。メディアは、会社情報をみます。個人の物語を求めています。社長はなぜ、これをやっているのか?やらないとどうなるのか?死んでしまうのか?そんなことを考えます。仕様には一切興味がありません。

このことを、頭に入れないと、メディア戦略は無効です。

そのためには、経営者が事業を始めた本音の本音を、社会、社長、組織の3つの観点でしっかり会社情報に書き込むと良いです。

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