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壁の巨人(人間)について考察してみた

《Attention》
⚫ 『進撃の巨人15周年記念マガジン』読了後の考察となります。
ネタバレも含みますので、未読の方は回れ右を推奨します。

⚫本記事では『before the fall』についても触れます。
ネタバレを大いに含みますので、未読の方は回れ右を推奨します。
⚫本記事は、『before the fall』と『進撃の巨人』は地続きの物語であるという前提での考察です。
「『before the fall』と『進撃の巨人』は全く別の物語である」と解釈している方も、回れ右を推奨します。

⚫なんでも許せる方は↓GO!!!


『before the fall』における、壁への信仰。


 まずはじめに『before the fall』という小説は『進撃の巨人』を原作とした派生作品であり、漫画化もされています。
 以下は漫画第1巻の内容紹介です。(note初心者故出典をURLにしてしまいましたが、出典元は「講談社コミックプラス」です)

副題の「Before the fall」とは、『進撃の巨人』本編第1巻で語られる「ウォール・マリア陥落の前」を意味する。物語は、エレン達が活躍する『進撃の巨人』本編の時代から約70年前から始まる。壁の中に進入を許してしまった巨人の吐瀉物の中から、一人の赤ん坊が発見された。やがて成長し、キュクロ(巨人の子)と名付けられた少年は数奇な運命を辿る。そして、彼は未だ巨人と戦うすべを持たなかった人類に希望をらす存在となっていく──。


突如出現した巨人の脅威から身を守るため、人類は巨大な城壁を築き、その内側を生存圏とした。そして三十年後、壁内の最も外縁に位置する街であるシガンシナ区は、巨人を崇める「巨人様」と呼ばれる狂信者が招き入れた一体の巨人によって蹂躙される。そして、巨人の嘔吐物の中にあった妊婦の死体から奇跡的に生まれた赤ん坊がいた。後に彼は「巨人の子」キュクロと呼ばれ、数奇な運命を辿る。試し読みする

https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000045139

 この通り、本作品にエレン達は出てきません。
 そして、本作品に描いてあること全てが原作『進撃の巨人』に当て嵌まるとは限りません。つまり、原作『進撃の巨人』の約70年前にキュクロは存在しなかった可能性もあるということです。
 それを念頭に置いた上で、『before the fall』は原作『進撃の巨人』と地続きの物語だと解釈しています。


《Attention》
 もしあなたが「『before the fall』と『進撃の巨人』は全く別の物語である」と解釈しているのであれば、今すぐ別のnoteを読みに行かれることを推奨します。


さて、『before the fall』の紹介はここまで。
ここからは、この作品内に出てくる「巨人を"巨人様"と呼ぶ集団」について、私独自の見解も踏まえながら説明します。
 これはパラディ島の暦(以下 パラディ歴)でいうと約780年での出来事です。具体的に何年から存在する集団かは判りませんが、統制されている様を見るに750年頃には既に存在していたと考えられます。
この集団の主な活動内容は、教会のような建物内で円形に並び、神聖なる巨人に祈りを捧げるというものです。この時両隣の人と腕を組んだポーズでお祈りするのですが、そのポーズはまるで壁の巨人のようです。

○この巨人信仰から私は、「このポーズのまま巨人化した人間が、壁の巨人になった」と考察しました。
 ○更に言うと、原作漫画の"現在公開可能な情報"で、壁は地下10Mまで埋まっていると書かれていたことから、「足首まで土に埋めたまま巨人化した」と考えられます。
⇉上記2つの考察を合わせると、「足首まで土に埋めて立った状態でお祈りポーズをした人間が円状に並び巨人化した」ということになります。(綺麗な円状になったのは始祖の力ということで…)

巨人様と崇める集団は祈る時円の中心を向いて円を形成していたので壁の巨人も全員王都ミットラスを向いているのかと考えましたが、アニメで壁の巨人が一斉にお散歩し始めた瞬間に、内と外どちらを向いていたか忘れてしまった為、そこは今回追求していません。。

原作『進撃の巨人』で語られた壁の成り立ち

話は2000年前まで遡ります。
 部族エルディアが巨人の力を手に入れマーレ国を追い詰めますが、マーレに巨人の力の大半を奪われ、巨人大戦が起こります。
以下ヴィリー・タイバーの演説です。

昔話をしましょう
今から約100年前
エルディア帝国は巨人の力で世界を支配していました。
<中略>
そして敵のいなくなったエルディア帝国は、同族同士で殺し合うようになりました。
「巨人大戦」の始まりです。
八つの巨人を持つ家が、結託や裏切りを絶えず繰り返し、血を流し合ったのです。
<中略>
これは我々タイバー家が「戦鎚の巨人」と共に受け継いできた記憶
<中略>
「巨人大戦」を終結させ世界を救ったのは、フリッツ王なのです。
正しくは145代目の王 カール・フリッツ。
彼は「始祖の巨人」を継承する以前からエルディア帝国の残虐な歴史を嘆き、同族同士の醜い争いに疲れ果て、何より虐げられ続けたマーレに心を痛めておられたのです。
<中略>
エルディアが同士討ちに倒れると、自らと…できる限りのエルディア国民を島に移し…壁の門を閉ざしました。
<中略>
いずれ報復を受けるまでの間 壁の中の世界に
争いの無い束の間の楽園享受したい
どうか それだけは許してほしい
王は最後にそう言い残しました。

『進撃の巨人』単行本25巻第99話「疾しき影」

 壁の成り立ちについてここから考えられることは「壁の巨人になった人間は、元々どういった人間だったのか」ということです。

 まず、壁になったのはパラディ島に辿り着いたエルディア人です。
大勢のエルディア国民は島に避難出来たようですが、逆にどんな人が島に行かれなかったor行かなかったのでしょうか。
一つ、マーレと戦い続ける意思を持つ人はパラディ島に逃げないので、島に行きません。
 一つ、レベリオ収容区のようなマーレに囲まれた土地に住むエルディア人は逃走手段が無いので避難出来ません。
 一つ、船に乗って海を超え、更に歩くという長距離移動を出来ない人は避難出来ません。ex)心身にハンデを持つ者、高齢者。
 以上の事から、若いエルディア国民は大勢避難出来たと考えられます。

 次に、具体的にどんな年齢層の人がが壁になったのか。
 老い先短い高齢者はそもそもパラディ島に辿り着けませんし、子どもや 子孫を残せる年齢の人は未来を創る役目があるので、壁に相応しくありません。
 すると消去法で若くもなく老いてもいない年齢層の人が適任となります。
 『進撃の巨人』の世界は、私達の住む世界より約百年遅れていると思われるので、長く生きられても70歳くらいでしょうか。
 とすると、壁になったのは50〜70歳くらいのエルディア人だと考えられます。(40歳台は労働力)

勿論、壁になる基準が年齢だけだとは思っていません。

最後に、人々はどんな心情で壁の巨人になったのか。
 パラディ島に来た時点で、人々の巨人大戦に対する思いはカール・フリッツ王と通づるところが少なからずあると思います。
 つまり、終わりの見えない巨人大戦に疲れ果て、争いのない世界にいたいという気持ちは、パラディ島に来たエルディア人全員に共通していた思い, ということです。
 そんな人々が壁の巨人になる動機があるとすれば、それはひとえに「この壁の中に束の間の楽園を築きたい」という一心でしょう。
 争いから逃げ、自ら子孫を残せる年齢でもない彼らが最期にできる事があるとすれば、それはマーレに滅ぼされるまでの僅かな時間、パラディ島の人々を見守り続けること。
  中には巨人大戦で大切な人を失い生きる力をなくした若者、巨人大戦で赤子を亡くした女性もいたことでしょう。そうした生きる希望を失ってしまった人でも、最期に壁の巨人となることで生者の役に立てる。
そうした「僅かな時間だとしても、この狭い壁の中に楽園を築きたい」という人々の思いから、この壁は造られた, 壁の巨人になった のだと私は考えます。

お散歩中の気持ち

ここでの"お散歩"は地ならしのことです。(何度も"地ならし"と書くと私のHPが0以下になってしまい書き終われないので…)

さて、108年振りに起こされてお散歩させられた壁の巨人達ですが、お散歩中何を考えていたのか。

いずれマーレに壁を壊されるなり、壁内人類皆殺されるなりして終わるはずだった。
 それが、どこにあったか分からない"進撃の巨人"継承者が、何故か始祖の力を使えて不戦の契りを壊し、我々壁の巨人をお散歩させている。
 我々は報いを受け入れると壁の巨人になったのに、エレン・イェーガーのせいで一匹残らず駆逐しなきゃいけなくなった。

壁の巨人はこの島の外にある
すべての地表を踏み鳴らす
この世から
駆逐するまで

『進撃の巨人』単行本31巻123話「島の悪魔」エレン

本心は このままマーレに壁内の平和という泡沫の夢を終わらせてほしいのに、エレン・イェーガーの命令のせいでマーレ人を踏まなくちゃいけないという、心身の大きな乖離。
 でも命令だから素直に従おうとするのは、エレンの命令の力もあると思うけど、それに加え「我々を動かせるなら王家の血筋を受け継いでいる方、即ち我らがカール・フリッツ王の子孫にあたる方だから従いたい」という思いもあると思う。

お散歩させた動機をエレンが壁の巨人達に話したかどうかは分からないけど、
仮に「エルディアを救うため」と言っていたら、「大国マーレに抗うエルディアの魂が強く受け継がれたのか」「このたった100年でエルディアにどんな変化があったのだろう」と受け取るだろうし、
仮に「自由のため」と言っていたら、「そんな訳の分からない動機のためにお散歩するのか…」と嫌になると思う。
 争いに疲れて安息の地を求めてパラディ島に来た壁の巨人達(人々)にとって、わざわざ争いに行くのは共感しづらいだろうし、ましてや自由とかいうよくわからないものの為に攻撃するのは理解出来ないと思う。

以上、お散歩中の大型巨人の表情がどれも暗い理由。

人間体に戻り…

ここから先は15周年マガジンのネタバレです。

一問一答
Q. 壁の巨人は最終的にどうなったの?
A. 素っ裸の人間に戻った後、直前まで踏み潰されそうだった人達にリンチにされたよ。

はい。
 この一問一答のせいで夜も眠れず、こうしてノンストップでここまで書いています。


 争いから逃げて壁となり束の間の平和を眺め、
 動けるようになったかと思えば、殺されてもいいと思っていたマーレを殺すことになり、
 巨人として殺されるのかと思いきや人間に戻され、
 一人の人間(島の悪魔)として大勢の人々からリンチに遭い、
 激しい痛み苦しみを感じたまま、人として死ぬ。

これが壁になった人の顛末だと私は考えます。

壁の巨人(人間)から読み取る作者の意図

作者の意図と書きましたが「作者はそう考えているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。真偽不明だけどそう考えていたら嬉しいな、私が。」というふわっとしたものなので、本気で正しい意図を絶対読み取るんだ…!という強い姿勢ではありません。(注意書き終わり)

原作者諫山先生がいつぞや仰っていた、
それが前進でなくても右でも左でも、後ろだとしても、進み続けることが大切
という話もそうですし、
エレンの「進み続けた者にしか…わからない」
という台詞もそうですが、
諫山先生は進み続けることを大切にされている方だと感じます。

そんな作者にとって壁になった人間とは、進まない者, 進むことを止めた者だと考えられます。
その止まることを選択した人々は地獄のような最期を迎えるわけです。

逆説的に、進み続ける大切さを伝えていると感じた一問一答でした。


ここまで読んでくださったあなたへ。
ありがとうございます。

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