巳年のはじめにヘビにまつわる小説を『厭魅の如き憑くもの』三津田信三著

 怪奇幻想作家の主人公が、執筆の取材で訪れた村。そこでは憑き物落としを生業とする一族が”カカシ様”の呪いとしか思えない方法で一人ずつ殺害されていく。彼らが信仰しているモノの正体、そして連続殺人の犯人は・・

あらすじ

 怖面白かったです。でも大長編ゆえに読むのがとても大変でした。小説の大部分、最後の最後まで人死にが続き、ラストは一気に読ませる解決パートへ。

 怪異な現象のひとつひとつを伝承や信仰の歴史をヒントにしながら主人公が推理を進めていくのですが、途中、複数の登場人物の視点で怪異に遭遇した様子が語られるのでスリルがあって興奮しました。

 ただ謎解きのカギになるのは村の地形だったりするのですが、私の乏しい想像力ではうまくイメージをすることができない部分もあって、何度も地図や描写を読み返してみたものの諦めて雰囲気だけ味わうところも多々ありました。

 (この村かなり特殊な地形なのですが、挿入されている地図はかなり遠くから眺めた全景をさら~っと描いてあるだけなので神隠しのあった場所や殺人犯が消失したその様子を読解するのが難しかったです)
 

 ただ最後は論点を洗い出して犯人特定してくれるので、途中で本を閉じて自分なりに考えて楽しむこともできると思います。(かなり長いので、序盤の記憶があやふやになってたこともあり個人的に助かりました・・)

 この先ちょっとネタバレしながら感想を書きますが・・


 個人的には、幼い聯太郎と漣三郎が九供山を登って”何か”に遭遇したパートが好きでした。

 結局、聯太郎は何を見たのか、そして彼はなぜ消えたのか。明かされないままでしたが・・

 それでいうと、結構明かされない(?)ままのものが多かったですね。。殺された人の口に詰められていた物実(ものざね)とか、いったいどんな意味があったのだろう。いずれも蛇をあらわしているとのことだったし、きっとそれらは山神様にお供えされていたものということで一応納得したけど、なんで口に詰めたんだろう。死体のそばに置いておくだけじゃだめだったのかな。

 黒子の正体も後でわかるかなと思ったら、結局記憶喪失の謎の青年のままだったし。

 あと動機も、推測はできるけど語られないままだったので、嫉妬なのか、せっかく死んだことにされて生き神となった自分の存在が危うくなるための怒りだったのか。

 というかこの上屋の憑き物落とし自体がインチキなのに、自分の娘や孫娘を命の危険にさらしてまで行う九供儀礼とか、孫娘を生き神に仕立て上げたいために死んだことにし、よその子を身代わりに生きたまま棺桶に入れて埋葬するとか狂ってるにもほどがある。。

 小霧はこのままだと一生誰にも見つからないように生きねばならなかったのかな。恋愛どころか誰とも関わることを許されず、なのに双子の妹は自分の好きな相手から想われて、しかもその様子をこっそりと盗み見ることしかできない。

 千代の憑き物落としの時、あれは小霧が祖母に対してのはじめての反逆なのかもしれない。

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