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「あなたは私の姉さんになりたくはなくって」夏目漱石『虞美人草』第六章

宗近くんの妹の糸子。甲野さんの義妹の藤尾。

ヤバい戦いがここにある。

家庭的女子の糸子。芸術的女子の藤尾。

こんなふうにキャラを表現せざるを得ないのは、漱石がそうはっきりと作中で規定しているからだ。

糸子と藤尾はお互いの肚の内を探りながら会話する。

交互に喋っている訳ではない。どちらの言葉がどちらから発せられたものかわからない時もある。

糸子がどこまでクレバーなのかわからない。愚鈍さを装って相手を操縦するクレバーさがあるからだ。藤尾が優勢に見えなくもないが、糸子も決して負けてはいないように思う。

小野と藤尾の関係のようなものは、私もよく見たことがある。谷崎潤一郎の『痴人の愛』だって、こんな感じではないか。俺もこんな感じかもしれない。小野にどこか共感する。

だからという訳ではないが、藤尾の悪女感は私には薄い。天秤にかけるくらいは誰でもするし、誘惑の身振りも誰でもする。誘惑をしない誘惑もある。いずれにしても、男女関係は語りにくい。

この章、糸子のもとに藤尾が行き、糸子にあれこれと言って、お前さんうちの兄が好きなんじゃないの、と押し付けていた。糸子もまんざらでもないようだ。哲学好きの男子と家庭的な女子。漱石はどうして、こういう組み合わせにした?

私はやはり、藤尾=ナオミ枠に惹かれるのだろう。

それがわかっているので、極度に防御しているのかもしれない。

読むのが結構厳しい章だった。

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