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私の本棚 〜写真史・写真論関連 Vol.1〜

本棚ってほど大袈裟なものではないが、集めた本をまとめる作業は楽しそうだ。

それぞれテーマに絞って、本棚を紹介していきたいと思う。

今回は「写真史・写真論関連」。

なぜ、写真史・写真論の本を集めているかというと、単に「趣味」としか言えない。

私自身は無趣味で、写真を趣味にしているかというとそんなことはなく、若い時は写真に写るのがあまり好きではなく、逃げ回ってばかりだったし、今も撮影といえばもっぱらタブレットでモノをただ写すだけである。実はスマホすら持っていない。マイナンバーでスマホ必須なので、さすがに買おうとは思っているが。

そんな感じで自分は映らず、撮らずのくせに、写真集自体を観るのは好きだし、そんな写真についてアレコレみんなが言うのを読むのが好きなのである。

①鈴木八郎『発明の歴史カメラ』発明協会 1980

写真史の記述はたいてい写真機構の解明の歴史の記述から始まる。アリストテレスの観察にはじまって、アルハゼンによる光の直線性の解明、ルネサンス期のカメラオブスクラ。そして、レンズ、絞り、感光物質、感光物質を塗る支持体ときて、写真の発明に至る。

写真と写真機の発明家として、ニセフォール・ニエプス、ルイ・ジャック・マンデ・ダゲール、ウィリアム・ヘンリー・トルボット、イポリット・バイヤールが語られ、そこから銀板写真、湿板写真、乾板写真と時代を追って記述されていく。

コダックのフィルムと、ライカをはじめとする小型カメラの話までくると、写真家、表現ジャンル、そして、写真表現の歴史になっていくのが常套なのだが、この鈴木八郎氏の『発明の歴史カメラ』は、いつまでも写真機の話を続けるのが独自で面白い。

実際の本のタイトルは『発明の歴史 カメラ』なのだが、なぜか表紙にはスペースがなく、『発明の歴史カメラ』となっている。「首都大学東京」みたいだ。

②オデット・ジョワイユー『写真家ニエプスとその時代』パピルス 1998

翻訳の大著なので、読みにくいこと限りないが、写真を初めて発明したのは誰かという論争の結論を混ぜっ返した本でもあって興味深い。

写真の発明はダゲールによるダゲレオタイプというのが定説で、私自身もそれでいいと思っているクチなのだが、ジョワイユーによるこの本ではダゲールはあくまで改良家であり、研究協力者に過ぎない。確かにニエプスの「ヘリオグラフィー」は感光材を硬化作用において進めており、それだと実用化しづらいから、ダゲールに軍配をあげるのは妥当であるとも思われる。

しかし、ニエプスの探究無くしてダゲールが単独で事を成し得たかという疑問もある。いずれにしても、ダゲールの発明に注目が集まることによって歴史の闇に沈んだニエプスという人物に焦点を当てて、名誉回復を目論んだユニークな本であることは間違いない。

③『エドワード・スタイケン モダンエイジの光と闇1923-1937』クラヴィス

20世紀初頭のストレート写真運動と言えば、アルフレッド・スティーグリッツをその旗手とするのが定説である。フォトセセッションとギャラリー291、機関誌『カメラノーツ』と写真雑誌『カメラワーク』によって、ストレート写真運動の理念とメディアが出揃い、そこに集まる若者たちの律動が、新世紀の息吹を余すところなく伝える。

その中にエドワード・スタイケンという若者もおり、ヨーロッパ移民の息子としてアメリカ合衆国に来た。そして、スティーグリッツと共鳴し、ある時まではその良き継承者であった。しかし、画家の夢も諦められず、第一次大戦前のヨーロッパに渡り、そこで従軍する。

スタイケンはその経験により写真の展示可能性に目覚める。写真の芸術性だけではなく、社会的文脈に応じて写真はコミュニケーションを促進する道具として使えるということを理解するのであった。スタイケンのいわば機能主義的転回と言えるだろう。

アメリカに戻ってスタイケンは、Vogueのエドナ・ウールマン・チェイス編集長とともに、ファッション雑誌のビジュアル化に邁進する。モデルに服を着せて、ただポートレート的な写真をファッション写真として提示するのではなく、服それ自体の質感を光と影のコントラストの中で強調して見せたのがスタイケンである。

チェイス編集長が、写真の中身がエロティックに過ぎないかと心配する中、スタイケンは、ルーブル美術館には見せ物小屋で見せたら猥褻になるような絵画がたくさんあります。でもルーブルだから芸術になるんです。Vogueをルーブルにしましょう、と編集長を励ました。スタイケンは写真とその文脈を創り出したのだと言える、いいエピソードだと思う。

スタイケンは、マリオン・モアハウスというモデルを繰り返して起用しており、ファッションモデルのイメージ規範を作り、ミューズ的な発想を具現化した。こうしたファッション写真における業績は、芸術写真を中心に据える写真史の中では商業的営為として、あまり高くは取り上げられてはないが、この図録を読むと印象も変わるかもしれない。私はスタイケンの懐の広さを感じた。

今回はこの3点を紹介します。

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