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『西洋の敗北』エマニュエル・トッド著(文藝春秋)-2/ウクライナは負けつつあり、ロシアは先進国以外の国々を味方につけた、、、実態無いGDP大国の西洋は敗れたと。そしてトッド氏は(バイデンの)米国を告発している。

この書により、ウクライナの敗勢が明らかに

この「西洋の敗北」によって、ウクライナの敗勢が能天気な日本人にも明らかになったのではないか。

トッド氏は、ロシアが西洋先進国以外の国々との(積極的でないものを含めた)支持や交流(物資的な貿易やモラルサポート)により、戦争の継続のみならず、国家としての継続性あるいは発展性まで手にしているとの趣旨を記している。
そして、そうしたウクライナ問題に対して、西側のメディアが偏った報道しかしないため、日本ではウクライナが敗勢にあるなどということはまったくわからない。
しかし、実際はウクライナは負けるだろう、妥協せざるを得ないだろうということは確かなようだ。

原因は米国の戦争遂行能力が劣るということ

ウクライナ戦争は米国の武器援助によりウクライナ国民が戦っているのが実態でその武器が数量的にロシアに対して劣勢なのだが、
なぜGDPで10分の一のロシアに対して、米国は武器供給で追いついていない状態なのか、ということがこの「西洋の敗北」の中で論ぜられている。
結論的に、米国はすでにモノをつくるという能力を失っている、一方ロシアは2014年のクリミア問題のときから、このときのことを想定して国内の金融制裁対応、製造能力対応を準備してきたのだと。
つまり、実際に戦争を遂行する能力で、米国はロシアに劣るということなのだ。

トッド氏は、米国の一極支配構造を告発している

そしてトッド氏は、この情勢が作られてきた歴史的経緯を検証し米国の一極支配を告発している。
それは、寡頭制(実態はネオコン)の米国によるものであり、具体的には軍事と金融の両輪によるものである。
(トッド氏の論説は、人口学や歴史、宗教、地政学にも及び各種のデータの裏付けを用いて重厚に展開されているが、ここでは端的に結論のみを引用)

金融について言えば、日本の三十年不況も米国の金融支配の裏返しであることを思うとき、私にはすっきりと腹に落ちることだ。
おそらく世界の国々にとっても米国に対する同様の感情はあるに違いない。
そして、その行き着いた先が現在の米国のモノ造り能力の欠如という実態なのである。
そして、西洋のモラルが崩壊して敗北した、ということが「西洋の敗北」の趣旨となっているのである(そうなりつつあることを決定論的に記述しているにしても)。

トッド氏の立ち位置は”右”でなく

トッド氏は、この書の中で米国を、そして西欧を批判している。その一方でロシアを擁護している、と言える。
どちらも民主政治を行っているとし、米国と西欧は形式上民主政治ではあるが実態は寡頭制である。ロシアは権威主義ではあるが民主制度である。
また、人口学的、家庭人類学的にロシアは豊かになっているのに対して、米国は人口学的、家庭人類学的に劣化している(乳幼児死亡率の高さ、ジニ係数の高さなど)事実がそれぞれの国の活力、アクティビティーと言った国家の質を表象しているとしている。
例えば、このような捉え方から、日本ではトッド氏を”右”に位置する学者と位置付けられている。

一方、トッド氏の個性なのか、トランプ氏を好きではないようだ。これまでの著作でも批判を繰り返している。
私はこのことについて、確かにトランプ氏の発言には普通に聞くと激し過ぎるところがあると思うが、それを単独で取り上げればそういった解釈をすることもわかる。
トランプ氏は、あまりにも行き過ぎたネオコン勢力、左翼リベラリスト勢力に対するために、あのような端的で激しい表現を用いざるを得ないと私は理解している。これは、保守の立場で自身でXなどで論争活動をすれば肌身でわかることだ。そういう意味でネオコン勢力や左翼リベラリスト勢力はとんでもない社会破壊勢力となっているのだ。

いずれにしても、トッド氏は、反トランプであり、そういう意味で”右”ではない。やはり出身がパリ近郊である、その自身の由来を体して自由を信望する、(左翼リベラリストではないが)どちらかと言えばリベラル体質の学者だと思う。

トッド氏に見えていないもの若しくは見ていないもの

「西洋の敗北」の中で、特に米国の金融支配の核心をそのドル通貨発行権にあるとする記載が見えたのは、トッド氏にしては遅すぎる認識だったのではないか。
我々日本の保守層にとっては、10年以上前から渡辺惣樹氏の著作群によってその金融支配の核心にドル通貨発行権があることは理解されてきていた(例えば下記)。

なので「西洋の敗北」のその記載に驚きはまったく無く既視感にいっぱいだった。

保守層にとっては、敵はディープステイト(そのドル通貨発行権を持つ国際金融スジを中心とする勢力)なのだ。このディープステイトについては別に記す必要があるが、グローバリズムを推進する左翼リベラリスト集団であると言って良い。
トランプが対しているのも、このディープステイトである。

バイデンディープステイト米国政権の終焉で、2023年夏に書かれた「西洋の敗北」の次の幕が開ける

「西洋の敗北」は、2023年の夏に書かれているものを日本では2024年11月末に翻訳出版された著作である。そういう意味でバイデンのディープステイト政権真っ盛りのときのものと言える。
また、トッド氏のトランプ嫌いも情勢認識にバイアスがかかっている理由だ。

昨今の日本の政治状況は惨憺たるものだが、米国の大統領選でトランプ氏を指名した米国民の民意には大きく勇気づけられるし、私にはこれから世界がより良く変わっていく希望を感じることが出来る。
おそらく今年(2025年)かなりの世界情勢の変化が訪れることは間違いなく、日本もこの非常に悪い状況を脱する可能性が出てきたと思う。
まさに「西洋の敗北」の次の時代の幕が明けて来ているということだ。


以上、おもむくままに記事にしましたが、今後もこの極めて重要な世界情勢については引き続き記事にしていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。



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