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「化学系学生の就活について 化学メーカー、加工メーカー、セットメーカー、、、」化学メーカーからセットメーカーへの転職経験者より

新しい材料であたらしい製品、事業という夢

最近寂しく思うのは、化学系学生にとって、材料技術者になって従来にない新しい材料技術を創出して、世の中にない製品あるいは事業を作りたいと思う夢を実現できる環境がかつてと比べ非常に細ってきたということです。

しかし、化学という新しい物質を創出できる科学技術において、新しい材料による新しい機能や特性、効用を目指さずに何を目指すのか、ということはあると思います。

化学系学生の就活について

還暦になる老技術者であり、化学メーカーからセットメーカーに転職し、新しい材料技術により新しい製品を創った者として、これからもそういう夢を持った学生を応援したいと思っています。
10年以上、採用面接を採用する側で行ったものとしても、そう思っています。
それは日本の産業経済のためでもあります。

化学メーカーか、加工メーカーか、セットメーカーか?

1)まず、「化学メーカーか、加工メーカーか、セットメーカーか?」という問いの前に、第一に必要な見極めは、
オリジナルの技術で世界一を目指す会社か、という点です。
もちろん今日の企業経営は複雑多岐であり、単純に技術だけで利益の出るビジネスになることは難しいことです。しかし、そこに独占や排他性により高利益を得ようとすれば、技術重視はせざるを得ないことであり、そういう意味で、オリジナルの技術で世界一を目指す会社なのか、という問いは重要です。特に創薬メーカーなら独占できない製品を投資回収してビジネスにすることはできないでしょう。
2)「化学メーカーか、加工メーカーか、セットメーカーか?」
歴史的に見てみます。
・まずは化学メーカー
古くは化学メーカーは若干欧米からの技術導入色の有る技術オリエンテッドな新製品を創出していたときがあり、そういう創成期の化学メーカーは非常に面白かったと想像されます。それは私などより一世代上の戦前生まれの世代です。
その後、環境問題をさきがけに化学メーカー冬の時代が来て、団塊の世代を多く抱えて1990年代くらいまでの厳しい時代がありました。
しかし、その時代を通り過ぎることで、化学材料独特の製造ノウハウが真似しにくいことで、電機セットメーカーの退潮と前後して、春の時代がやってきたのが2010年前後からの状況です。ただ、あれから10年、次の時代への対応での苦慮が忍び寄りつつあるのが現今の状況かもしれません。
・加工メーカー
大手化学メーカーと比べ、規模の小を利して、小回り良く原材料そのものより、それを利用した加工品により、川下消費者のニーズにミートする製品を創ってきたのが、加工メーカーです。
戦後80年になんなんとする時間を利して、いまや原材料を主ビジネスとする大手化学メーカーより売り上げの大きい加工メーカーも出始めています。
2000年以前より独自の付加価値を川下に提供し続けていて、隆盛を誇ってきましたが、昨今、大企業化したのと、フロンティアの縮小で曲がり角に来ているとも言えます。
技術革新と共に新製品、新事業を展開するメーカーもなおかなり存在します。自動車タイヤメーカーなども今なお技術革新を続け、不可欠の重要資材とも言える技術をもって将来に臨もうとしているかに見えますが果てして?
・セットメーカー
セットメーカーのうちで、電機メーカーは90年代を過ぎてからは東アジア諸国メーカーの台頭により、かつてキラキラと輝いていたものがほとんど剥落しました。
中には、2008年くらいまで輝きを保った、精密系セットメーカーもあり、いまでもかつてほどではないにせよ光るメーカーもあるにはあります。

さて将来性は?

就活というのは、会社の将来性を見るという重要な意味があります。
実際に、将来性を正しく判断するのは、実は容易なことではありません。
今現在の業績を見ていても、実は将来性はわかりません。

一般に大企業は安定していますが、大きな成長は期待できず、ダイナミズムは、伸びていく中小企業に劣ります。
志とエネルギーのある学生さんに対しては、本来的には、伸びていく中小企業がやはりダイナミックであり、向いていると思います。

しかし、前項で述べたように、業界そのものに栄枯盛衰の波があり、また個別の会社にもあります。

私自身の経験を言うと、
化学メーカーからセットメーカーに転職したのは、
実際に新しい機能を創る現場で、それによって新しい製品の世界を拓きたい、と思ったからです。
最初の20年は、足搔きもがきましたが、製品ははるか遠く、でした。
ただ、この間、会社全体としては中企業から大企業へ成長したダイナミックな期間でしたので、仕事そのものへは入れ込むことができ、充実していました。
20年目から27年目で二つの新しい技術を創り、製品として世の中に貢献することができました。
しかし、27年目から定年までの7年は、会社全体が退潮したことで、組織そのものが1400人から300人へと縮小し、そこで将来へ繋ぐ人と組織の運営、そして再生への準備にと苦労しました。

そういう意味で、現役を40年としても、私の経験からは、良いときと言うのはそんなに続くものではないということは頭の隅に置いておく必要があると思います。

一人一人に道があるが、、、、

一人一人に道がある、ということになりますが、ただ出世のため、金のためあるいは出世や金が第一、という方々も実際には多いのですが、私としては実際世渡りのうまい人や運の良い人も稀にはいますが、やはり、自分がありたい、やりたいことを想定して、仕事を会社を選んでいただきたいと思います。
もちろん、給料をもらえなければ生活そのものができませんし、結婚だってやはりすることになるのが普通ですから、そういうことも考えなくてはいけません。
ただ、やりがいのある仕事が出来そうな、という視点を第一に、自分自身の人生設計を構想していただくのが最も良いと思います。

もちろん、今の時代ですから、転職は良く見極めてするのであればよいことだとも言えます。
そのための忍耐力や人生勉強も実は必要ですが、そういう意味でも、やりがいのある仕事が可能な、という視点こそが重要です。

最後に

抽象的だったかもしれませんが、学生の皆さん、あるいは就職して間もない若い皆さんにとって、化学という軸を持つ技術者としてより良いエンジニア人生が拓けることを願ってやみません。










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