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「今年発売が予想される新薬から2023年の製薬業界を展望する|コラム:現場的にどうでしょう」について

このブログでも再三取り上げて来ている黒坂宗久さんのAnswerNewsのコラム『現場的にどうでしょう』の最新版が1/26に掲載されました。

今年の新薬

今年発売が予定されている新薬について展望しています。
今年、実に300を超える新薬が新たに販売される予定だそうです。
その中で冒頭触れているのは、エーザイのアルツハイマー治療薬のレカネマブで、漸く執念で臨床効果が確認でき、恐らく実態として初めてアルツハイマーに効果を持つ新薬なのでしょう、非常に期待がかかっていることは他のメディアでもご存じの方が多いことでしょう。

疾患領域別に見てみると、がんが最も多く、感染症、中枢神経系、免疫、心血管と続いていて、現在注目される医療分野というものが概観できます。

モダリティ別では約半数が低分子医薬品で、抗体、タンパク質・ペプチド、遺伝子治療の順で多くなっていて、意外になお多くの新薬が低分子医薬品であることです。

低分子医薬品がなお多いことについては、なにも触れられていませんが、私の仮説を少しお話ししておきます。

また、これら今年販売予定の新薬の内、ブロックバスター(年10億ドル以上の売り上げを有する医薬品)に成長する新薬のベスト20のリストが同時に黒坂さんのコラムに掲載されていますが、この中の20の内の7つを低分子医薬品が占めていて、これもこうした大型医薬の中に依然としてオールド医薬に分類される低分子医薬品が入っていることにやはり以外の感が有ります。

私の素人感覚も含めた仮説ですので、話半分に聞いておいていただければと思いますが、ここで述べてみます。

近年になり、新しい医薬モダリティーの波が医薬そのものの概念を変えるほどにやってきたということはよくご存じのことと思います。
抗体医薬は、文字通りその筆頭で、がんや免疫、それにレカネマブに見られるように中枢神経系疾患にもそれは画期的な薬として登場してきて、その効果を発揮しています。
それは、生体の中にある標的分子に対する非常に高い選択的な結合を通して、標的を狙い撃ちする薬としての抗体医薬であることがありますが、抗体医薬がはっきりと標的を狙えるようにその他のモダリティーにおいても標的を明確に狙った医薬の開発が非常に活性化してきているということでもあるでしょう。
そうした中で、標的を狙うという狙い方、その方法論が技術レベルとして高くなってきているということがあると思うのです。高レベルで疾患標的を狙い方法論の技術が開拓されてきている、そしてその手段も同時に、モダリティーの種類が増えることで方法論の技術そのものも精緻化し高レベル化してきているのではないかと思うのです。
そういう進歩が低分子医薬品についても、新たな捉え方で見直され方法論のリインベントというような技術革新が起こっている可能性があります。

そうした仮説に立てば、恐らく今後、低分子医薬品についてもかなり従来と形を変えて、ある種画期的な医薬品が開発されれ来る可能性が有ると考えられます。
その一端が、中分子医薬品といわれるペプチドや核酸医薬などに顕れているのだろうと私は思います。

こうしてみてくると、創薬企業としてはもちろん、新しいモダリティーによるアプローチを活性化していくことに変わりはありませんが、得意としていた低分子医薬品のコア技術についてはきちっと選択と集中をして継続的に研究開発力を維持していく必要があるのだろうと思います。

今後、大きく動き続ける創薬技術ですが、非常に面白い展開が起きて来ると期待されます。日本企業には、是非ともこの中で価値ある一席を確保し続け、発展していってもらいたいと思います。


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