抗がん剤各論~代謝拮抗薬~
前回、抗がん剤には①代謝拮抗薬、②アルキル化剤、③プラチナ(白金)製剤、④抗腫瘍性抗生物質、⑤トポイソメラーゼ阻害薬、⑥微小管阻害薬があることを書いた。今回はその内の一つ、代謝拮抗薬についてである。
代謝拮抗薬の種類
抗がん剤は主に細胞分裂を阻害することで効果を発揮すると前回記載した。細胞分裂には、核酸を合成する、DNAを複製する、分裂するの大きく3つの要素があり、この核酸合成を阻害するのが代謝拮抗薬である。核酸合成には、プリン合成、ピリミジン合成、活性葉酸合成とあり、それぞれ作用する部位によってプリン代謝拮抗薬、ピリミジン代謝拮抗薬、葉酸代謝拮抗薬に分けられる。
プリン合成阻害
・メルカプトプリン
白血病に用いられる。
ピリミジン合成阻害
<フッ化ピリジン系>
(種類)
・フルオロウラシル(5-Fu)
・テガフール:5-Fuのプロドラッグ。
・ドキシフルリジン:5-Fuのプロドラッグ。
・カペシタビン:5-Fuのトリプルプロドラッグ。
※ドキシフルリジンのプロドラッグ。
※テガフールには、テガフール・ウラシル配合剤(ユーエフティ(UFT)®)や、 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1®)といった配合剤が存在する。これらは5-Fuの働きを増強するウラシルやギメラシル、腸管内での5-Fu活性化を阻害して消化器症状を軽減するオテラシルが配合されている。
(作用)
ウラシルに似た構造をしており、チミジル酸合成酵素(TS)という酵素と結合することで働きを阻害し、DNA合成を阻害する。
(副作用)
下痢、口内炎、悪心嘔吐、骨髄抑制、間質性肺炎、手足症候群
<シチジン系(シタラビン類)>
(種類)
・シタラビン
・ゲムシタビン
(作用)
・dCTPと競合し、DNAに取り込まれることでDNA合成を阻害する。
(副作用)
肝障害、白質脳症、骨髄抑制
葉酸代謝拮抗薬
・メトトレキサート
白血病などに用いられる。一般的には、関節リウマチ(悪性疾患ではない)に用いられることが多い。また、商品名はメソトレキセート®となっており、混同しやすい。
用語解説
プロドラッグ
プロドラッグとは、体内に入ってから疾患部位(患部)に到達するまでの間に、薬効成分が分解されないように化学構造を変換した薬。
・テガフール:肝ミクロゾームのチトクロームP450(CYP2A6)により徐々に5-FUに変換される。
・ドキシフルリジン:腫瘍組織が産生するピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼにより5-FUに変換される。
・カペシタビン:肝臓のカルボキシルエステラーゼ、肝臓や腫瘍組織に存在するシチジンデアミナーゼ、腫瘍組織に高レベルで存在するチミジンホスホリラーゼにより5-FUに変換される。
手足症候群
抗がん剤投与によって手や足に見られる一連の症状で、手や足の皮膚・爪の細胞が障害されることで起こる。手足症候群が起こりやすい薬剤には、5-FU注やカペシタビンのようなフッ化ピリミジン系の薬や、スーテントやネクサバールのようなキナーゼ阻害薬、タキソテール注があり、見られる症状としては、手・足のしびれ、痛み、皮膚の発赤、しみが出来る、皮膚が硬くなる、水ぶくれが出来る、爪が変形する、などが挙げられる。
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