筋ジストロフィー
消化器系の病気は、治療で治ることが多い。
完全に治らなくても、「寛解」と呼ばれる、病状が落ち着いた状態とできることもある。
しかし、病気によっては、病気の進行を遅らせることはできても、進行していくことを止めることが出来ない病気もある。そんな病気の一つがタイトルの筋ジストロフィーである。
筋ジストロフィーの種類
成人発症の筋ジストロフィーで最も多いものが「筋強直性筋ジストロフィー」であり、小児で多いのが「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」である。この他にも臨床症状の特徴や発症年齢、遺伝形式等で多くの種類に分けられているが、今回は頻度の多い上記2つについて記載する。
筋強直性ジストロフィー
・遺伝様式:常染色体優性遺伝。
・特徴:筋強直症を伴う筋委縮と全身の多彩な臓器障害を特徴とする。親に比べ、遺伝した子供は発症年齢が早くなり、重症化しやすい(=表現促進現象)。
※フロッピーインファントを呈する先天性筋強直性ジストロフィー児は本症に罹患した母親から生まれることが多い。
・身体的特徴:ミオトニア現象(把握ミオトニアや叩打ミオトニア)、斧様顔貌、前頭部禿頭、兎眼、四肢遠位筋と胸鎖乳突筋の筋委縮・筋力低下。
筋症状以外:白内障、心伝動障害、耐糖能異常、肺換気障害、低IgG血症、性腺萎縮、消化管平滑筋障害、過眠など。
・治療:根本的な治療はない。症状に対する対症療法が中心となる。筋力低下には運動療法、作業療法を行われる。
※筋強直に対する治療としては、抗てんかん薬などが用いられる。
※心伝道障害に対してはペースメーカーが行われる。
※呼吸中枢の障害により呼吸不全を起こしやすいため、非侵襲的陽圧補助呼吸(NPPV)が適応となる。
※球麻痺による嚥下障害に対しては胃瘻等の経管栄養が行われる。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
遺伝様式:X染色体劣性遺伝。ジストロフィン遺伝子異常により発症する。
特徴:幼少期に走れない、歩き方おかしい等で気付くことが多い。筋力低下は進行性で、15歳までに歩行不能となる。
・完全に治す治療はなく、病状進行を遅らせることが治療の中心となる。また呼吸不全、心筋障害対策が行われる。
※ステロイドは進行予防に対してエビデンスがある。歩行可能なうちに歩行可能期間の延長効果を期待して投与される。ただし、歩行喪失後も呼吸機能温存や側弯の進行抑制を期待して内服継続されることもある。
※心不全治療:ARB、βブロッカーなどの薬物治療となる。
※呼吸不全:睡眠時のNPPV導入が行われる。