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認知症の方を笑顔にする、高齢者のピアノ専門家Hitomiです。
今日も忘れられない人を書いていきます。
50代の男性Sさんに初めてお会いしたのは
Sさんが30年間ひきこもっていた
猫3匹と一緒に住む部屋でした。
20代の時にリウマチを患い
その後
病気の進行もあって
仕事をやめ
ひきこもるようになったのです。
お話しているとソフトで
でも自分を恥じているところもあり、
私は
「どうにか気持ちが晴れるようになったらいいな」
と思いました。
長らく病院に行っていなかったので
通院することにしました。
ずっと外を歩いていなかったので
車いすが必要です。
また人に会うのが怖いようなので
以前かかったことのあるなじみの病院に
私と生活保護のケースワーカーさんとで
一緒に行くことにしました。
でも当日になると
いろいろ理由をつけて断ってきます。
それでもお誘いする中で
2回通院できました。
私とケースワーカーさんは、
ガラス細工を扱うように
丁寧に丁寧に
少しずつ心の扉を開いていこうとしていたのです。
そしてある時
私の転勤が決まり
引継ぎをすることになりました。
その後、
訪問診療が入り白血病が見つかって入院。
Sさんは「これで死ねる」と喜んで
無理に退院し
お酒を大量に飲んで
吐血して亡くなった、
と聞きました。
私は大切にしてきたガラス細工が
壊されたような気がして
すごく悲しかったのを覚えています。
Sさんの本当の気持ちはどんなだったんだろう。
あのとき確かに
生きる気力を少しずつ取り戻していたように見えたのに。
「3匹の猫と話すと気持ちが安らぐんです」
と言っていた
優しいSさんを思い出します。