引用は適宜省略している。また、[ ]カッコ内は訳者による補筆である。
発言者一覧
○李在鉉(イ・ジェヒョン)……元在米韓国大使館職員(文化情報担当官首席、在米韓国広報館々長)、証言当時ウェスト・イリノイ大学准教授(ジャーナリズム)
○ソン・ソングン……サンフランシスコ湾岸地域向け韓国語新聞『コリア・ジャーナル』の元発行人兼編集者
○ドナルド・M・フレイザー……下院・国際関係委員会ー国際機関小委員会委員長
○エドワード・J・ダーウィンスキー……同小委員会委員
選挙妨害
註1……KAPA(韓美政治協会。米国版「在日本大韓民国民団(民団)」を目的に作られたが、実態は統一教会のフロント組織だった)元事務総長。なお、「韓美政治協会」「金容伯」は『韓米関係調査』報告書資料集1514ページに基づく(「容」の字が潰れており「蓉」の可能性もゼロではないが前者を採用している)。
モントレーの件をやや詳しく。
『フレイザー報告書(和訳版)』(以下『報告書』)を読んでいて、いちばん違和感があったのは、「なぜ金容伯が出さなかったKCIAへの書簡についてわざわざ書くのか?」という点であった(『報告書』49〜50ページ)。書かれている内容はKAPAの本性が表れているであろうが、どちらかといえば彼が悩んだ末に出さなかったことに力点が置かれているようにしか読めないからだ。
のちに金が、先に引用したとおり在留韓国人の自治会選挙に出たことを知り、なんとなく理解できたような気がする。彼はおそらくサンフランシスコの在留韓国人社会でも人望があり、KAPAで事務局長に就いていたのも、KAPA設立の際、統一教会が正体を隠すために使った「隠れ蓑」だったのだろう。組織創設時に統一教会とは関係のない有名人を(統一教会の名前を出さずに騙して)重職に就け、組織が軌道に乗ったらなにかと理由をつけて排除する、あるいは統一教会との繋がりに気づいて辞職することで、結果的に組織が統一教会に乗っ取られるのは、やはり統一教会のフロント組織であるKCFF(韓国文化自由財団)理事会からのチャールズ・フェアチャイルド理事長ら反対派の排除(『報告書』61〜63ページ)や、KCFF会長アーレイ・バーク元米海軍提督の辞職(『報告書』57ページ)と共通する統一教会のやり口である。
金の逡巡にあえて紙幅を割くことで、彼がKAPAにいた「不名誉」を少しでも和らげる意図があったのでは? と考えると、ここは「報告書」という感情を排すべき文書の中で執筆者の感情があらわれた箇所なのかもしれない。
キレる領事
その選挙での話。
註2……外交ポーチ(外交行嚢、外交封印袋)のこと。
領事というよりチンピラ。どこぞの議員秘書を思わせる。
ということで、『フレイザー報告書』からやむなく漏れたり、ディテールが削がれた話を、小委員会における宣誓証言をもとにチマチマ書いていきたい。それで『フレイザー報告書』の理解に少しでも資すれば幸いなのだが。