徒然物語47 繋ぐわ。彼方まで…

皆さんは、私をご存じ?
 
そう、私は“延長コード”よ。いわゆるドラムタイプのね。
 
オフィス機器のみんなからは、チョーコさんって呼ばれてるわ。
 
その気になれば、フロアの端から端までコードを行き渡らせることだって、わけないのよ。
 
そうやって、電源から遠く離れた場所まで電気を供給してきたんだから。
 
電気が走って、体を駆け巡る感覚…
皆さんにはわからないでしょうが、私にとってはその瞬間が一番、仕事しているっていう気分になって、大好きよ。
 
パソコン、プロジェクター、照明器具、掃除機、果ては職場パーティーのホットプレートまで。
電源から、必要とする場所まで、数え切れないくらい繋いできたわ。
 
若い男子たちはみんな、私を放っておけないみたいで、脇に抱えられて毎日あちこち飛び回っていたっけ…
 
けどね。そんな栄光の日々は、もう遠い過去のお話。
 
最近、無線で飛ばすとかいって、ワイヤレス化がどんどん進んでいるの。
 
おかげで私の出番も減っちゃった。
 
私が普段どこにしまわれているかを知っている人もずいぶん少なくなったわ。
 
けれど、オフィスを見回せばまだまだ無数のコードがたこ足のように張り巡っているから、私が完全にお払い箱になるのは、まだまだ先のようね。
 
今のうちに転職先を探したい気持ちだけど、私にはどうすることもできない。
 
お払い箱になった私の行きつく先は自分では決められない。
 
運命を待つだけってのも、寂しいものがあるわね…

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