徒然物語41 大名行列危機一髪!

「したーにー、したぁーにぃーー」

やえやれ、いったいいつまで続くのやら。

今日は大名行列が通る日だ。
町はいつもの賑やかさとは違い、厳かな雰囲気に包まれてやがる。

町民はひざまずいて、こうべを垂れるのが習わしだ。
もうずいぶん長いこと、こうしているが、侍や馬の足音は、一向に終わる気配がねえ。

やべぇ…足がしびれてきやがった…

「お母ちゃん、足が痛いよう。」
「ほら、鈴。もう少しだから、いい子だから我慢しな!」

声が聞こえる。隣の親子も必死に我慢してるんだろう。

声色は五つくらいか。
そんなに小せぇ女の子までが、おっかさんに𠮟られながらも、じっと耐えてやがる。

なにせ、少しでも頭を上げりゃ、誰でも構わず打ち首ときたもんだ。

ここでおいらが恥をさらすわけにはいかねえ…

しかし。

…くぅ…だめだっもう我慢できねえ!!

とうとう辛抱がきかなくなって、四つん這いの恰好で前に飛び出しちまった。

やっちまった…

打ち首か…??

しかし、唖然とする男とは裏腹に誰も無反応。
騒ぎ立てる者はいない。

「したぁーにぃーー…」

大名行列の声だけが、静寂にさざ波を立てている。

そこで気が付いた。

…そうだ。おいら、地縛霊だから誰にも見られないんだった…

てか、そもそも落ち武者だから、首から上ないんだった☆

うっかり、うっかり。

えっ耳がないのに、どうして音は聞こえるのかって?

そいつはご愛敬ってやつよ。

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