徒然物語92 針・刺・涙

その程度のことで、だらしがない。

早く顔を上げろ。

前を見ろ。

そして、在庫データの入力を早く終わらせろ。

上の奴らは口を揃えて、そう吐き捨ててくる。

だが、私はあまりの激痛に顔を上げることができずにいた。

その程度、ケガの部類に入るまい。

いつまでそうしてるんだ!

さあ、仕事を続けろ!

偉い奴らは私を見下して口々に言う。

お前たちにはわかるまい!

喰らったヤツにしかわからない、あの痛み…

そう、ホッチキスの針が爪の内側にぶっ刺さる、あの痛み。

涙で前が見えねーよ…


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