徒然物語82 天国
「将軍様がいらっしゃったぞ!全員っ敬礼!」
ザッ
壮大なホールに響く号令と共に、将軍様が壇上に上がる。
総勢500人は超えるであろう将校たちが、緊張した面持ちで一斉に敬礼する。
将軍様は口元に笑みを浮かべながら話し始めた。
「うむ。皆のもの。今日は新しい政策を考えたので発表するぞよ。」
将軍様の声はホール中に響き渡る。
皆の注目が集まる中、彼は続けた。
「近頃、世界では税金を安くする代わりに、わが国に企業を誘致するという政策が流行っているらしいぞよ。」
将校たちは一様に頷く。
「そこで、世の国も取り入れることにしたぞよ。
企業が我が国に移転してこれば、税収はガッポガッポ。多少低くとも、問題ない!」
将軍様は自信満々に話し続ける。
「手にした資金で、軍備拡張ぞよ!
余はこの政策を『タックス・ヘブン』と名付けるぞよ!
皆の者、どうじゃ。良い案だと思わんかの?」
「はい!将軍様!とても良い政策だと思われます!」
「うむ。では早速実行に向けて取り掛かるがよい。」
「ははっ!!」
…言えない…
ここにいる、誰もが気付いている。
諸外国の政策は『租税回避地』…そう“タックス・ヘイブン”だ。
だが、言おうものならどんなお仕置きが待っているか…
考えただけでも恐ろしい!
「よいかっ!将校たちよ!将軍様のお言葉通り、タックス・ヘブンを進めるぞ!」
一同「おお~!!」