徒然物語65 私は名探偵♪
休日の昼下がり。
穏やかな日差しが軒先に入り込んでくる。
ウッドデッキにリクライニングチェアを運んだ私は、紅茶をお供に小説の世界に浸る。
ささやかな楽しみだ。
近所の子供たちが庭先で遊んでいる声が聞こえる。
まだ保育園か、小学校低学年くらいだろう。
近所のお友達4,5人ではしゃいでいる。
子供たちの元気な声をBGMに読書に耽っていると、
ふと歌声が聞こえてきた。
『わーたしはー
名探偵♪
毒グモさーがーすー
どこにーいるー?』
んん?なんの歌だ?
聞いたこともない歌だ。
もっとも、最近の子供たちの流行ソングなど知る由もないから、わかるはずはないが、思わず聞き入ってしまう。
どうやら続きがあるようだ。
『わーたしはー
名探偵♪
死んでもさーがーすー
どうやって探すー?』
2番で終わりのようだ。
子供たちは歌い終わると、
「毒グモいないよ~」
「いないね~」
などと笑い合いながら、家の中へと入っていった。
その途端、静寂が私の周囲を包んだ。
けれども心の中では、あの謎の歌が何度も繰り返されている。
まるで、名探偵と子供たちが活躍する、物語の中に紛れ込んだかのようだ。
やれやれ…これは、すぐには小説の世界に戻れないな。
そう感じた私は紅茶のお代わりを求めて立ち上がる。
穏やかな心地に包まれながら、心の中で思う。
もし毒グモ見つかっても触らずに、お父さん、お母さんに教えようね。
あと、死にそうになるまで働いちゃあいけないよ。
なーんてね♪
不思議な不思議な午後のひと時。
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