Ep5. もしもジンとピンガが親子関係だったら【ジンピン親子if】【名探偵コナン妄想捏造小説】
最終話です!
(最後に映画のネタバレあります)
登場人物紹介
コードネーム:ピンガ
本名:アラン・ユール(Allan Juhl)(勝手につけた)
本作の主人公。
コードネーム:ジン
本名:不明(黒澤陣という名前は明かされている(おそらく偽名))
黒の組織の構成員。
コードネーム:ラム
本名:不明
コードネーム:ベルモット
本名:シャロン・ヴィンヤード
アランの育ての親たち。
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喫煙所に入るとまず、アランは心を落ち着かせた。
どうしようもない怖さと不安感がアランを襲う。
アランが怖いと感じているのは、いままでの人生で経験したことのない緊張感と、何が起こるか分からない不確かさに由来するものであろう。
ジンとの対話が、アランにとって未知なる領域であることは確かだ。
「用があるならさっさと話せ。こっちは暇じゃねえんだ。」
相手はあのジンだ。
待ってくれるような奴ではない。
アランはまだジンの目を見て話せなかった。
これから起こることへの不安を感じながらまずは証拠となるDNA鑑定の結果を机の上に置いた。
「…何だこれは。」
ジンは鑑定結果に視線を落とす。
置かれたそれが何の資料なのか把握すると、アランに視線を送った。
その目は鋭さを帯びていた。
「あんたと俺の親子関係を示すDNA鑑定の結果だ。見ろよここ。」
そう言って用紙の一番最後の2文を指差した。
アランはまだ現実を受け止めきれず用紙から目を逸らしている。
「…何の真似だ。」
「何かの真似なんかじゃない。悔しいけどこれが事実だし現実なんだ。」
自分でも受け入れたくない事実を口にしていることで、心が抉られた。
ジンを問い詰めて本当のことを聞き出さないとすっきりしない。
アランはただ真実を知りたいだけだった。
「ふざけたことをぬかすな、これはどういうことだ!」
「そんなのこっちが聞きてえよ!あんたは俺の父親なんだろ、父さんなんだろ!?
近くにいるならなんで黙ってたんだよ!!」
アランは涙目でジンの目を見て話した。
ジンが父親だという事実を受け入れたとしても、その事実を知ってて隠していたジンを、周りも許せなかった。
「どうせラムとかベルモットも知ってんだろ!?俺とあんたが親子だってことを!?何で黙ってた!?おかしいだろ、何でだよ、何であんたが俺の父さんなんだよ…!」
アランは感情的になり机の向こうに回り込むと向かいにいるジンに掴みかかった。
殴られたりタバコを押し付けられてもおかしくないこの状況で、アランはジンに泣きつくように言葉を続けた。
「ラムから聞いたヒントでコペンハーゲンまで行って自分のことについて調べたら、戸籍に父親の名前は入っていないし、自宅のあった住所に行ったら母さんとの写真が出てくるし、父さんがいた形跡なんて一つもない。
でも、ラムはなぜかホテルの情報を持っていた。あんたが親の父親だと知っているのなら、あんたから母さんとどこで会ったっていう情報を聞き出せばホテルの情報は手に入るしな。
そこでの利用客の記録にあんたの名前があって目撃証言もあった。なのに何で父親の形跡がないのか疑問に思ったけど、冷静に考えてみれば俺でも分かった…。
あんたがその時もうこの組織にいたのなら全て話の辻褄が合う!
籍がないってことは結婚してないってことだし、組織の周りの奴らに俺との親子関係を隠すってことは、知られたらまずいから俺にも黙ってたってことだし、そもそも結婚もしていないのに子供がいるってことは、何らかの理由で母さんと関係もったってことだろ…!?
それを考えると、きっと俺は望まずに生まれてきた子供…。存在してたらまずい奴なんだろ!?なあそうなんだろ!!」
アランは自らの推理により、自分が存在すること自体が好ましくないと考えるに至った。
自分が生まれてこなかった方がよかったという感情を抱くようになっていた。
この考えについて話していくうちに、アランは自分の言葉に傷ついた。
アランはジンのコートを掴んで噛み付いていた。
しかしアランの心は悲しみに満ちていった。
力が抜けるようにズルズルと落ちていき、ジンの足元にへたり込んでしまった。
組織の幹部メンバーのジンの目の前でこんな姿を見せたらきっと殺される。
どっちにしろジンからしたら邪魔な存在だろうから、だったら殺されてしまえばそれでいい。
アランは覚悟を決め顔を上げると、そこには拳銃を構えたジンの姿があった。
本当に殺される…!
アランはそう思った。
「あぁ、そうだな。たしかにテメェは邪魔な存在だ。
だがな、今の推理には間違いがある。まあ俺しか知らない情報もあるからな、真相に気づける奴なんてそういねぇがな。」
(間違い…?まだ何か隠しているのか…コイツ…)
ジンは顔色一つ変えずそのまま言葉を続けた。
「たしかにテメェは望まずに産まれてきたガキだ。俺は別に望んじゃいねーな。
あの女が勝手に産んだ子供だ。
じゃあ逆に聞くが、なぜあの女が死んだか、テメェはそこについては調べたのか?どうなんだ?」
ジンにそう言われアランは何も返せなかった。
アンナが死んだ理由については何も疑問を抱いていなかったからだ。
「あの女はな、17で俺に身体を売った女だ。俺との関係はそれまででしかない関係だ。なのに奴はそれで子供を産んで金がねぇからってわざわざ日本まで来て籍を入れろと言ってきた。そんな女、俺にとっちゃ邪魔な迷惑な女じゃねーか。
そんな女を殺して何が悪い。全てあの女が勝手にやったことだ。」
アンナは殺された。
しかも実の父親に母親を殺された。
ジンから言われた衝撃の事実に動揺を隠せないアランは頭が混乱していた。
やっと見つけた父親は母親の仇だった。
ずっと親の温もりを求めていたアランにとっては残酷すぎる現実だ。
「だから俺はテメェを殺る。母親の元に行けるんだ、文句ねえだろ。なぁ?」
ジンは自分の足元にいるアランに目を合わせるようにしゃがみ、再び拳銃をアランに向けた。
アランは拳銃を向けられている怖さなんかよりも、残酷すぎる現実に悲しんでいた。
目の焦点が定まらない。明らかに動揺している、哀しみを持った目をジンに向ける。
「…なぁ、俺はどうすればいいんだ…。」
「あ゙?」
「父さん、俺はどうすればいいんだよ…!!殺されたくもないし死にたくもない!!
俺はただ、真実を知りたかっただけだし、父さんに会いたかっただけなのに!!
どうしてこんなことになってんだよ!」
アランは完全に悲しみに包まれており、恐怖という感情は完全に消えていた。
彼はジンの前に立ち、必死に助けを求めるように泣きついていた。
何度も父さん、父さんと呼ぶアラン。
ジンはしばらくアランの様子を静観していた。
しかし、実の息子が自分を父さんと呼びながら泣きじゃくっている光景を目の当たりにすると、彼の心は何かに動かされたかのように感じられた。
拳銃を握りしめてる手を下ろす。
長年組織に仕える者として、ジンは感情を排除していたはずだった。
しかし、この状況を目の当たりにして、彼の心には何かが芽生えたようだった。
それは、彼自身が気づかなかった深い感情の一つであり、彼の内面を揺るがすものだった。
しかし、ジンはまだ自分自身の感情について完全に理解しているわけではなかった。
ただその状況に対処するために、自分の感情を抑え込んだ。
アランはしばらく泣き続けた。
ジンは初めは動揺していたが、アランの不安を目の当たりにし、心の落ち着きを取り戻すために、彼を宥めることにした。
自らの胸を貸し、アランの背中を優しい繊細な手つきで彼を撫でながら、まるで子供をあやすように落ち着かせていた。
しかしその事にはまだ気づいていないアラン。
しばらく経つとアランはようやく静かになった。
彼は落ち着きを取り戻し、現在の状況をようやく理解した。
アランは顔を上げた。
そしてジンと目が合った。
(…殺されていない…?どうしたコイツ…。これでも組織の幹部なのか…?)
(…アンナ、アラン…悪かった……俺のことは許さなくていい…)
アランは、ジンが自分を宥めていることに不思議な思いを抱いていた。
お互いの意思疎通はまだ完全には成立していなかったが、お互いに向けられていた敵意は消えた様子だった。
喫煙所の外で様子を見ていたベルモットと、別の部屋から様子を伺っていたラムも、ジンがアランを落ち着かせていることにほっとしていた。
ジンとアランの間には、これから先も続くであろう複雑な関係性が芽生えつつあった。
「おいあんた…「アラン」
アランは初めて名前を呼ばれドキッとした。
「たしかに俺はお前の母親の仇だし、お前の存在が俺にとって邪魔な存在であることにも変わりはねぇ。
俺はお前を殺せる機会があれば躊躇無くいく。だからお前も殺せる機会があれば俺を殺せ。勝手に死ぬなって言ってんだ。
お互い、殺したい存在であることを忘れるな。どっちにしろ、死んだらアンナには会えるんだ。悪い話じゃねぇだろ。」
ジンはアランの目を見て話した。
今まで見たことのない優しい目をしている。
アランはそれを言われて納得した。
たしかに悪くない話だ。
「なんだ、あんた結構いいとこあるじゃん!
要は自分以外の奴らに殺させねえってことだろ?いいぜ、俺だってあんたら幹部のみんなに追いつけるように、追い越せるようなメンバーになってやる!!」
「フン…、切り替えの早いガキだ。さっきまでただの泣き虫だったくせによ。」
ジンはそう言うと、軽々とアランを持ち上げ、立ち上がった。
「ということだ。人前で父さんとか呼ぶんじゃねーぞ。呼ぶなら俺ら2人だけの時だけだ、いいな!?」
「おい!分かったから!!下ろせよクソ親父!」
ジタバタと暴れるアランを他所に、ジンは喫煙所を出た。
喫煙所の外にはベルモットがいる。
さすがのベルモットも瞬時に隠れることは出来ず、盗み聞きしていることがバレてしまった。
「ということだベルモット。俺らの関係を言いふらしたらテメェも殺すからな、覚悟しとけ。」
「あら、言ってくれるじゃない?だったら黙秘料でも払ってもらおうかしら?」
「フン、目敏いババアだ。」
アランはベルモットに話を聞かれていたことに悔しさを覚えた。
「ていうかおい!どこ連れて行くんだよ!下ろせって!!」
「家に帰るぞバカ息子。ガキはさっさと寝ろ。」
「こんのクソ親父、ガキ扱いすんじゃねぇ!」
アランはジンがバカ息子と呼んでくれたことに嬉しさを感じていた。
息子として認めてくれた、その事実だけで嬉しかった。
それから12年経った頃にジンの約束は果たせた。
母親の仇を果たすことはなかったが、親子関係が周りにバレることなく、お互いの約束もバレることなく約束が果たせたのならよかったのだと、アランは思った。
また天国で会おうぜ、クソ親父。
END(だと信じたい)