ステラおばさんじゃねーよっ‼️97.里帰り
「明けましておめでとうございます!」
カイワレ一家は、悠一朗の一部が眠る鳥海島へ里帰りした。
さらに3人はカイワレの祖父であり、知波の義父である夏男に会いに来た。
「ささ、遠慮なく食べてな」
やさしく言うと夏男は黙り、終始目尻を下げて新しくできた《家族》の話に熱心に耳を傾ける。
島でとれた新鮮な魚介類をふんだんに使ったおせち料理や島野菜が鮮やかに浮かぶ出汁の利いたすまし汁のお雑煮も最高に美味しくて、こうして会って話せるのがすごくうれしくて、それだけで皆の気持は盛り上がった。
⭐︎
この3日間、夏男とおのおのたくさん話した。
初出版の喜び、新しい病院での毎日、看護学校を卒業し資格受験を迎える不安…を。
夏男も島での暮らしの近況を話してくれた。
初来島の歩もたいそうこの島の雰囲気が気に入った様子で、
「今度来る時は絶対、夏!スキューバダイビング、やりた〜い!!」
海の蒼さを見渡しながら、帰りの船便に乗る前に次の来島時期を夏男に宣言した。
カイワレは夏男に神妙な面持ちで、
「今度、紹介したいひとを連れてくるね」
と照れ臭そうに告げた。
「じゃあ、わたしも!」
と知波も便乗し、自身の恋人の存在を夏男に明かす。
「じゃあじゃあ、あたしも!って今はイイ人いないけど…夏までにはイケメン彼氏が、あたしの隣りにいる!はず!!」
ふたりに負けじと挙手する歩。
ふたりは顔を見合わせ爆笑し、
「どうぞ、どうぞ」
と歩にその役をゆずった。
余裕ヅラするふたりを見、歩はふくれっ面をしさらに笑わせた。
そんなやりとりを見守る夏男は、
うん、うん、
と嬉しそうにうなずき、細い目を一層細めた。
ほんのひとときの正月休暇だったが、年末年始に《家族》団欒できて、この島で夏男とともに笑顔あふれる時間を過ごせたのは良き想い出となった。
「おじいちゃ〜ん!今度は、あたしんちにも遊びに来てね〜」
歩は船上から大きく手を振り、夏男に叫んだ。
夏男は懸命に腕を上げ、丸印を作り歩に応えた。
⭐︎
新年の幕開けとともに、萌からチャットメールが届いた。
カイワレの初名義作品「夢占い♡夢日記」は無事本日刊行される準備が整ったこと、
ネット予約を含め、売行きが好調であること、
そして早くカイワレに会いたいということ
が書かれていた。
カイワレがニヤケてそのメールを見直していると、歩はそれをのぞき込み、
「らぶらぶやねー!」
と冷やかした。
カイワレは、
「見るなよ!」
と怒った仕草をした。
「あーあ。ひかちゃん、どうしてるかなぁ?」
歩は淋しそうにぽそりと呟いた。
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