ステラおばさんじゃねーよっ‼️68.任意同行〜たい兄
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️68.任意同行〜合格発表の日 は、こちら。
🍪 超・救急車
ピンポーン…
本日小鳥遊宅に、2回めのチャイムが鳴る。
歩は一目散に玄関の扉を開けた。
カイワレの顔を見るとそのまま抱きつき、歩は子供のように泣きじゃくった。
カイワレは呆気に取られ、歩に訊いた。
「どうかしたの?」
「ママが、ママが…」
「ママが、どうした?」
「ママが、警察に連れて行かれちゃったー!」
「え?!警察…何処の?」
「わかんない」
歩は気が動転し過ぎて、知波の連行前後を思い出せない。
「とにかく一旦、座ろう」
カイワレは歩を抱え、家の中へ入って行った。
⭐︎
「少し、落ち着いた?」
カイワレは、やさしく歩に話しかけた。
「うん、あったかい」
ホットミルクの入ったマグカップを両手で包み、歩はカイワレの心のぬくもりも一緒に感じていた。
「これ、俺がメンタルボロボロになった時、親友が作ってくれた飲みものなんだ」
「そっかぁ。良い友達だね」
歩は力なくカイワレに呟いた。
「歩ちゃん、ママを信じよう!俺らにできるのって、それしかないんだし」
「うん、わかった」
今までの人生で、今日が最高で最悪な日だ、と歩は天を仰いだ。
「さあ今日はさ、歩ちゃんの合格祝いでお邪魔したんだから、パーっとお祝いさせてほしいな!」
「ありがとう。やった!とまさか?!がいっぺんに来るもんだからあたし、パニクっちゃった!ごめんね、カイワレさん」
泣きべそをかきながら、歩は言った。
「ううん、大丈夫だよ。俺、太士朗って言うんだ。あらためて、よろしくね!」
「たいしろう、さん…。何て呼べばいい?」
「そうだなー。たいちゃんでもたい兄(にい)でも、なんでも良いよー」
歩が自分の妹だとわかっているからか、カイワレは珍しく女性にイニシアチヴを取っている。
「じゃあ、たい兄にする…へへっ」
照れ笑いする歩は、少しだけ気分が上向いたように見えた。