ステラおばさんじゃねーよっ‼️62.不眠症〜赤鬼の夢
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️61.墓前にて〜誓い〜 は、こちら。
🍪 超・救急車
聖の御通夜からずっと、知波は深い眠りにつく事ができない。
精神科の医師に処方された睡眠薬を服用しても、効果がない。
最近見る夢は、悪夢ばかり。
唯一、元旦に見た吉夢。ーーー
娘と息子が、楽しくおしゃべりしてる夢、くらいだ。
けれどあれは現実に起きていた事で、夢ではないと、歩から聞いた。
夢とうつつの境界線も、曖昧になっていた。
年末から新年が明けた今の今まで、何もする気が起きない。
カイワレのメールにも目を背けたまま。
倦怠感が残置され日々すっきりしないまま、知波は仕事に行き続けるしかなかった。
⭐︎
最近カイワレ出没の、同じ夢を見る。
こちらを一瞥(いちべつ)し、哀しい表情から徐々に激怒のそれに変わり、身体が赤く染まり、筋骨隆々となる。
最終形態は赤鬼で、毎度お決まりの台詞を浴びせられる。
「おい、何をしてる?やるべき事を果たせ!使命を自覚しろ!!」
重低音の声が、知波の肢体に反響し、脳裡に木霊(こだま)する。
そのたびうなされ、汗だくで目を醒ます。
わかってるわかってるわかってる…ってば。
知波は夢の中でもカイワレの残像に追われ続け、眠れなくなった。
もう、夢占いの本を開く気にもならなかった。
⭐︎
仕事も、家庭の事も、カイワレの事も、すべてが限界に達していた。
知波は非番の日に、病院の精神科で診察を受けた。
「軽い抑うつ状態です。仕事、休めますか?と言っても、看護師は休める環境にありませんよね?」
この病院の他病棟の看護師と知っていて、医師はわざわざそう言った。
知波は負けずに言い返した。
「そうですね。ストレスは万病の元ですから上司に掛け合ってみます。診断書の作成をお願いできますか?」
そう言い遺し、知波はさっさと診察室から退出した。
その後、診断書と処方箋をもらいそのままの足で知波は勤務病棟に向かった。