ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉘ウソツキ〜尾行と暴露
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🍪 超・救急車
知波はひどく興奮し、ひどく落胆した。
帰りの電車ではすべての力が抜けきって、ボロ雑巾のように腑ぬけてしまった。
狭い座席の横壁しか寄りかかれるものがなくて、全体重を預けた。
あんな事きかなきゃよかった。
知波の胸さわぎが気のせいかどうかは、これからカイワレと関わっていくなかで確かめていくしかない。
はあ、今日はとんだ1日になったな…。
あんなに待ち焦がれた日が、どん底に突き落とされる日になってしまうなんて。
知波は必死に涙をこらえながら顔を片手で隠し、自宅最寄駅まで電車に揺られた。
⭐︎
家に着くと玄関ポーチの照明が灯っていたので、歩が帰宅しているのがわかった。
今から夕飯の準備をして、夜勤に行かねばならない。
疲れただなんて言っている場合ではなかった。
「ただいま」
「…おかえり、なさい」
歩は歯切れの悪い言い方で返した。
「歩、今日は帰るの早かったんだね。すぐにご飯作るから待ってて」
神妙な声色で歩は、知波を引きとめ話し出した。
「ママ、ちょっと話がある」
「夕飯食べながらでいい?」
「今すぐに聞いて欲しいから座って」
明らかに、いつもの歩ではない。
表情には何かへの怒りが、垣間見える。
「何かあったの?」
「それはママに聞きたいわ…今日そんなオシャレして、どこ行ってた?」
「友達と新軸で、買物しに…」
「嘘!買物なんかしてないくせに!!本当は誰と会ってたのか、正直に答えてよ!!!」
歩は今までに見せた事ない剣幕で大声を出し、知波を睨(にら)みつけた。
「嘘って、何でママが?そんな」
「じゃあ、これ見なよ!」
スマホで撮影した写真を、歩は知波に突き付けた。
「何この写真…ママの事、尾けてたの?!」
「尾けてたあたしよりママの方が!やましい事してるのが悪いんじゃん!!」
「やましい事なんか何にもないよ!ちょっと落ち着いて、ママの話を」
「やっぱ友達とか嘘じゃん!あたしとあんま年変わんなそうな若い男にさ!ヘラヘラ外で会うって、ヤバすぎでしょ!!吐き気がする!!」
歩はヒステリックにわめき散らした。
そんな歩を目の当たりにし驚きとショックのあまり、知波は自然と涙がこぼれ落ちた。
「誤解なんだよ…ママはやましい事なんかしてない…」
「じゃあ、これ聴いてみなよ!」
追い討ちをかけるように、歩はスマホのボイスレコーダーで録音したカイワレと知波の会話を再生した。
それは【露出狂】のくだりだった。
「だから……信じてよ!その人とは初対面だし、話してただけよ!?歩だって、近くで見てたんならわかるでしょ?」
娘に初めて責められ、知波は泣きながら必死に説明した。
「じゃあ何で最初にそれを言わなかったの!?」
歩も知波の涙を見て泣き出した。
「ウソツキ…」
そう言い残すと、歩は階段を勢いよく駆け上った。
バタンッと大きな音を立てた扉は、歩の心のそれも一緒に閉じられた音に聞こえた。
知波はさめざめと泣きくずれ、カイワレに会った事を後悔していた。