ステラおばさんじゃねーよっ‼️65.カイワレさんへ❶〜知波からの手紙〜
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🍪 超・救急車
カイワレさんへ
私はあなたにとって最低、最悪な母でした。
そもそも母と呼ばれる資格なんてありません。
あなたの父もあなたをも、結局は守れなかったのだから。
あなたがどこまで事実を知っているのかわからないけれど、すべてを伝えなくてはと思い、ようやく重たいペンをとりました。
私の今の名は小鳥遊 知波ですが、かつては大根 清(おおね さやか)といいました。
河愛 聖は、私の双子の姉です。
二卵性双生児なのであまり似ていなかったけれど、双子だからか気持や思考はよく似ていて、何も言わなくてもお互いの心を読み取れるような仲でした。
私が初めて男の人と付き合う事になり、一番心配してくれて一番喜んでくれたのも聖でした。
その初恋の人があなたの父、悠一朗さんです。
出会った頃の悠一朗さんは優しくて、大らかで、素敵な人でした。
それから結婚してあなたが生まれて、悠一朗さんの小さな工場も順調で、本当に幸せな日々でした。
あなたがつかまり立ちを始めた頃、会社資金を知人に持ち逃げされました。
倒産と破産、債権者からの追及で、悠一朗さんはノイローゼになってしまいました。
生活保護を受け、住まいを転々と変えながら、励ましたり、病院に付き添ったりして何とか支えていました。
それでも悠一朗さんの容態は悪化していき、死にたい、と言うようになりました。
あなたが3歳になったばかりのあの日、大根家にとって最も過酷で、凄惨な出来事が起きました。
悠一朗さんが一家心中をしようと、私とあなたに包丁を向けたのです。
その時、私も死ぬ覚悟をしました。
でも悠一朗さんは、私にもあなたにも襲いかかれませんでした。
やっぱり悠一朗さんは、優しい人だったんです。
けれど自分の力では心中できないと思うと、今度は殺してくれ、と懇願してきました。
私は悠一郎さんは生きてる事が、こんなにも辛かったんだなと、気づきました。
悠一朗さんを死なせてはならない…と今まで支えてきたことがかえって、彼を苦しめていたのかもしれない。
それで私は、言ってしまったのです。
そんなに苦しいなら、もう楽になっていいよ、って。
そう言うと悠一朗さんは、出会った頃のような優しい顔になり、ありがとう、と言いました。
そして彼は思い切り自らの胸に包丁を突き刺し、大量の血を流し、倒れました。
私は、何という事を言ってしまったのか…。
私が、悠一朗さんを殺したんだ!
錯乱し泣き叫び、私はすがる思いで聖に電話をかけ、助けを求めました。