ステラおばさんじゃねーよっ‼️57.小鳥遊宅〜同じ屋根の下
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️56.新年のご挨拶〜やさしさセンサー は、こちら。
🍪 超・救急車
カイワレは最寄駅の神也町駅から、歩の最寄駅の八雄南駅へ向かった。
駅間だけの距離だと、1時間弱で着く駅だった。
案外、近場に住んでたんだなぁ…。
八雄市内の駅やコンビニで、商店街で、お祭りで…カイワレは、小鳥遊母娘とすれ違っている光景を思い浮かべていた。
八雄南駅から八雄川方面へ5分くらい歩くと、閑静な住宅街が現れ、その一角に小鳥遊宅はあった。
築十数年ほどのこぢんまりとした家屋で、敷地は狭いが、玄関へ続く花壇や芝生は綺麗に手入れがされていた。
家主とは裏腹に、花壇ではシクラメンの花が生き生きと咲き乱れている。
【小鳥遊】という表札の脇のインターホンを鳴らすと、
「はい、今開けます」
とこちらが名乗る前に、歩が返答した。
⭐︎
「お邪魔します」
カイワレは誰かの家にひとりで遊びに行った経験がほとんどなかったので、お宅訪問というイベントにとても緊張した。
歩にはきっと明かされていない事実だが、今カイワレは、実母と実妹の家に来ていたりする。
今までのカイワレなら何をするにもためらってばかりだったのが、血縁というつながりが生まれた事で、ここまで大胆な行動が取れたのかもしれない。
「スリッパ、どうぞ」
ぎこちない態度で、歩はリビングルームへと歩き出した。
歩もひどく緊張していた。
大人の男の人を自宅に招き入れるのは、人生初だったからだ。
歩はお茶の支度をしようとキッチンへ向かったが、カイワレがそのまま後ろをついてこようとしたので、
「あの!ソファへ座っててください!」
と声を張ってしまった。
「はい!失礼します!」
カイワレは裏声になりながら返事して、ストンとソファに、腰を下ろした。
カイワレは、ゆっくりと部屋を見渡す。
リビングルームは、3人掛けのソファとテーブル、向かいにテレビ台という、無駄な物は置かれていないシンプルな空間だった。
小鳥遊さん、大丈夫かな…?
ふたりと同じ屋根の下にいる不思議を、カイワレはひとり噛みしめていた。