ステラおばさんじゃねーよっ‼️ えぴろ〜ぐ
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️101.叶糸(かないと)
🍪 超・救急車
「ねぇ、たい兄?」
夜勤明けで無気力な妹は、リビングソファを占拠したまま仰向けで足を組み、だらしない態度でスマホをいじり兄へ話しかけた。
「ん?どした?!」
スマホを上下にスクロールしつつ、ひんやりした床に寝そべる兄もネットニュースを斜め読みしている。
「夏じい、ママよりスマホの操作(こと)詳しいよね」
「そうだね。母さんはガラケー脳が抜けてないからスマホにはまだまだ疎いね」
太士朗は一旦起き上がり、歩に言った。
「あの世代で、あのレベルまでスマホの操作を理解してるじいちゃんがスゴ過ぎなんだけどね。チャットメール登録の時だって、じいちゃんが提案したんだし」
ふたりは祖父のスマホ知識にあらためて深く感心した。
「そうそうママ、夏じいのアカウント名をわざわざ紙の手帳に書いてたよね!帰宅するとすぐに大騒ぎして、『どうやってこれ、登録すればいい?』って」
母の慌てぶりを大げさに真似し、歩は思い出し笑いした。
「ふふふ、あれには参ったな」
太士朗もあの日の母を思い出し、クスりと笑った。
「ねぇ最近、例のSNS更新してる?」
「あぁ〜。書籍化決定と発売日は告知したけど、それ以降してないなぁ〜。なんで?」
太士朗は不思議そうに歩へ訊き返す。
「うん、ず〜っと気になってた事があってね。…お訊ねします」
歩は同じ体勢のまま、「お訊ねします」の声だけかしこまった調子で太士朗に訊ねた。
「【@捨てLa】ってアカウント名だけど、あの有名クッキーブランドから名付けたの?」
「いや、違うけど。なんで?」
「最初この名前見てあたし、【ステラ】っておばさんがこの中の人か〜って、フツーに思ったの。ウケるよね〜!」
小馬鹿にした笑い声を、歩は太士朗へ投げつけた。
わざと腹を立てたフリをし、太士朗は大きめな声で歩にツッコんだ。
「ステラおばさんじゃねーよっ!!」
うららかな春の陽射しが照る窓辺から太士朗の鈍色の声がもれつたうと、兄妹のテンションがさらに上がる。
「じゃあ、どういう意味よ?!」
「それは…」
しどろもどろになる太士朗。
隣室にいた母・知波はふたりが笑う声にほっこりし、天を仰ぎ涙ぐんだ。
「…とにかく」
『ステラおばさんじゃねーよっ!!』
《完》
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?