ステラおばさんじゃねーよっ‼️84.海洋散骨旅〜人魚伝説① 父と海女
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️84.海洋散骨旅〜少年と人魚の夢 は、こちら。
🍪 超・救急車
知波が夢から醒めた頃には、女中らが部屋食の夕飯支度をしていた。
この島ならではの海産品を使った料理の数々が、長テーブルに所狭しと並べられた。
自然の滋味がつまった海鮮料理を堪能した後、カイワレは知波へ夢記録ノートをそっと手渡した。
「母さん…さっき見た夢、読んでもらえる?」
「うん、いいわよ」
知波はそのページを開くと一気に文字を追い、すぐにそれを読み終えた。
「少年と人魚の夢か…。そう言えばこの島に【人魚伝説】があるんだって悠一朗さんからも聞いた事があるわ」
知波は自身のスマホを取り出し、【夢 人魚】と打ち込み検索した。
それから某夢占いサイトに書かれた人魚が夢に出てきた場合の記事を声に出して読み上げた。
「人魚を追いかける夢は、恋愛願望が高まっている暗示。恋愛に対してとても前向きな状態を表しています。エネルギーが満ち足りている状態なので積極的に行動を取るのが吉…ですって!」
深刻な想いを持って夢を書き伝えたはずのカイワレには、にやにやして自分を眺める知波の顔をはじめて憎らしく思えた。
「あのさ、この島に【人魚伝説】が存在するって事は前にも調べて知ってるよ。そうじゃなくてさ、この島に足を踏み入れたからこんな哀しい夢を見たのかな…って胸さわぎがしたんだ。だって俺、起きたら泣いてたんだよ」
カイワレはさっき見た夢に対する想いを知波に熱く伝えた。
知波は「ごめんね」と茶化した事を反省しつつ、急に天から啓示が降ってきたかのように呟く。
「悠一朗さんのお母さん、海女(あま)だったとか言ってたような…」
海女だったという言葉を受け、カイワレは知波に応えた。
「夏男さんなら、昔の事も知ってるんじゃないかな!この島の長(おさ)なんだし」
「そうね。その事も今夜訊いてみようね」
知波は冷静さを取り戻し、これから夏男に訊ねる事を頭の中で整理しはじめた。
そして息子との初旅行に浮かれはしゃぐ軽薄な自分を深く恥じていた。
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