ステラおばさんじゃねーよっ‼️ ㊹急展開〜ホットミルク
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🍪 超・救急車
玄関の扉が、ガチャリと開く音がした。
カイワレは自分の部屋で、ポーちゃんが帰宅した気配を感じた。
ヒソヒソ声がしてしばらくすると、カイワレの部屋の扉が勢いよく開いた。
「ちょい早だけどメリクリ!たいちゃーん!」
「たいしろうさん、メリークリスマス!」
と言った瞬間、パンパンとクラッカーが鳴った。
それにピクリともせず、カイワレは暗がりの部屋で床に膝を抱え座ったまま、顔を伏せている。
サンタのヒゲを付けて赤い帽子を被ったポーちゃんと、ワインレッドのワンピース姿のひかりは、肩透かしを食らって固まった。
ぬぅっと顔を上げたカイワレは、我慢し続けた涙の堰(せき)が一気に崩壊し、さめざめと泣きだしてしまった。
ポーちゃんは一瞬動揺したが、しゃがんでカイワレにぎゅっと抱きついた。
ポーちゃんの付けヒゲは、カイワレの涙でベトベトになっていった。
⭐︎
「たいしろうさん、これ飲んで」
ひかりが作ってくれたホットミルクは、熱すぎず冷たすぎずゴクリ飲むとほんわりと、喉から体の中心へあたたかさが下りていった。
「心配させてごめん…なんか、いろんな事を一気に知り過ぎて、頭ん中、グチャグチャになっちゃって」
カイワレはティッシュボックスを抱え鼻をかみつつ、思いの丈を吐き出した。
「たいちゃんは繊細だから、ブラックからの情報に気持が追いつかないのはわかる。でも僕は単純に、たいちゃんのお母さんが生きてて嬉しい」
なるほど、それはそうだなとカイワレは思えた。
ホットミルクが毛羽立ったカイワレの心を、少しだけ滑らかにしてくれるような気がした。
「たいちゃん、落ち着いた?」
「うん、ホットミルクでかなり…へへ」
泣いた手前、恥ずかしさが込み上げてきた。
「良かった!クリスマスケーキ買ってきたから、みんなで食べよ!僕の大好きな苺のショートケーキ!」
「ホールで買ってきたんだね」
「そう!ショートケーキの大人買い!」
ポーちゃんは謎理論にこじつけて、カイワレを笑わせようとしてくる。
そうしている間に、ひかりは淹れたてのコーヒーと、ケーキ用のナイフと皿を持ってきてくれた。
【母さがし】が始まってからカイワレは、呼吸の合ったふたりの姿に、安心感と羨ましさを覚えた。
ポーちゃんはひかりと一緒にいると、とても頼もしくなるのだ。
本当は兄貴ぶりたいカイワレだったが、このふたりの前では末っ子の弟のようだ。
それがまた心地よい。
だんだんカイワレの中に、前向きな気持が湧いてきて、現実を受け止めようと思えるようになった。
「大丈夫だよ、たいちゃん!僕とカンちゃんがいるんだから!」
いつもの笑顔でポーちゃんは言う。
嬉し泣きするカイワレを見てすかさず、
「隙ありー!!」
と言うと、カイワレのケーキから苺をあざやかに奪って一口で食べた。