ステラおばさんじゃねーよっ‼️②夢のなかの夢〜火災報知機-2
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🍪 超・救急車
11階の高層マンションから階下へ降りるために、共用廊下からエレベーター乗場へ歩を進めてみると、すでにその電源は自動で遮断されていた。
使い物にならぬ、真っ暗な箱がただただ宙に浮かぶさまは、とても間抜けで滑稽に見えた。
ああ、なんて事だ。
一瞬頭を抱えたが、すぐに非常階段に続く扉を開け、階段を一歩一歩下に降りながら、一段一段わが足底を踏みしめ、安全に降りていく。
このマンションに引越してはじめて、わたしは非常階段なるものを使っている。
しかも、パジャマ姿のままで。
わたしは、死ぬのか!?
非常階段が、ジェンガで失敗した時のように崩れ落ちて、このまま死んでしまうのか?!
不穏な未来の、想像しか浮かばない。
一瞬先は闇とは、昔の人はよく言ったものだ。
なんて、感心している場合ではない。
階下をひとつ降りるたびに、住人らの何人かと目が合った。
その目は、非常階段から下へ必死に降りているわたしを、他人事のように能面のまま見つめていた。
わたしはそんな彼らを横目に、下へ下へと階段を着実に降りて行った。
誰もが状況を把握しきれぬまま、必死に逃げ惑うわたしにも、こんな状況ですら平然と他所を窺う住人にも、唯一平等だったのは、ずっと鳴り続ける火災報知機の響音の不快さだけだった。
数分後、遠くから近づいてくる消防車と救急車のサイレン音が、火災報知機のそれと重なり合う。
その不協和音が更に、不快指数を押し上げた。
あと数階降りたら、やっと地上だ。
まるでひとりサバイバルをしている気分だ。
息をハアハアと吐くたびに、汗がにじみ、身体も弾む。
そして今、不確定要素だらけの世界に嘆息しては、軋んだ関節に痛みを感じていた。