
ステラおばさんじゃねーよっ‼️65.カイワレさんへ❷〜知波からの手紙〜
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🍪 超・救急車
すぐに聖は、飛んで来てくれました。
私は救急車を呼ぶ事もできずに、悠一朗さんをただ腕に抱き、頬を撫でていました。
聖は動かない悠一朗さんに、痛いだろうね、かわいそうに…と言いながら、良かれと思い、突き刺さる包丁を抜いてしまったのです。
声にならぬ声が漏れるのと同時に血を大量に吐き、悠一朗さんは息を引き取りました。
当時、私も聖もそのような医療知識がなかったために招いてしまった結果でした。
それからあなたを寝かしつけ、私と聖は園の裏手にあった真夜中の丘へ行き、悠一朗さんの遺体を埋めたのです。
何故、悠一朗さんを埋めたのか…理解してもらえないかもしれません。
理由はただひとつ。あなたを殺人犯の息子にしてはならなかったからです。
私はあきらめ、彼が死ぬのを許した。
聖はあわれみ、彼のとどめをさした。
聖は何も言わずとも私の共犯者になり、あなたを守り抜こうと誓い、秘密を分かち合ってくれたのです。
あなたをあの養護施設へ託したのは、聖があなたを守ってくれる絶対的安心感と《絆》があったからです。
絶対に裏切らないという、共犯者の絆と血縁の絆が。
それに悠一朗さんの失踪について私が疑われるおそれがあったのと、私自身の心も壊れてしまっていたからです。
聖の勧めもあり、私はこの街を離れました。
数奇なもので再婚するとまたこの街に戻り、歩が産まれました。
歩を抱っこしながらもあなたの事を忘れた事なんて一瞬もありません。
けれどあなたの父に死を促したのは、間違いなく私です。
だから会いたくても、会いに行けませんでした。
そして聖も本当の事は言わず、あなたの成長をずっと施設で見守ってくれていたのです。
私が聖を共犯者にしてしまいました。
聖は何にも悪くないのです。
聖があなたに何を言ったかはわからないけれど、きっと彼女はすべての罪を自分ひとりに被せて、他界したのだと思っています。
聖は本当に優しく、芯の強い人でした。
このような真実を知り、あなたはわたしと出逢った事を後悔しない訳がありません。
本当に、本当にごめんなさい。
歩の進路が、近々決まります。
それが済んだらすぐに警察へ出頭して、事情を話します。
これからもあなたの幸せを遠くから、ずっとずっと祈っています。
小鳥遊 知波