ステラおばさんじゃねーよっ‼️②夢のなかの夢〜火災報知機-3
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️ ②夢のなかの夢〜 火災報知機-2 は、こちら。
🍪 超・救急車
非常階段の地上ゴールには、鉄格子の門扉があった。
その間近には、幼い子供を抱きかかえた母親らが、狭いエリアで何やらヒソヒソ話をしている。
彼らの脇をすり抜けたわたしの視線の先には、我がマンション前に聳え(そびえ)立つ高層マンションの住民、戸建の近隣住民とであふれ返り、人だかりとなっていた。
微妙な面持ちでこちらをうかがい、いぶかしみ、完全に他人事をきめこみ、佇んでいた。
バタバタという駆け足の音に振り返ると、精悍な顔立ちをした、色黒顔の若く屈強そうな消防士ふたりが、マンションエントランスへ勇猛に駆けこんでいった。
しかしこのマンションエントランスには、セキュリティロックがかけられていて、入居者しか出入りはできない。
わたしは、分厚いガラスの自動ドアの前でキョロキョロと視線を動かす彼らに、声をかけた。
「入居者ですが、ここを開けましょうか?」
両者はパッと振り返り、
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
と見た目通り爽やかに、返答をした。
わたしは持っていたルームキーを、自動ドアの開閉につながる機械へと挿しこみ、ひねり廻した。
すると、自動ドアがスーッと開くやいなや、彼らは施錠された管理人室をめがけ、進入しようとしている。
わたしも開いたドアの中へ入り、エレベーター乗場真向かいにある管理人室の方を見た。
すると、甲高くて早口な声が、管理人室の警報機から繰り返し流れて、耳に飛び込んで来る。
《感知機が異常です》
《感知機が異常です》
《感知機が異常です》
《感知機が異常です》
消防士のひとりは、管理人室の鍵を開けられる人、つまり不動産管理会社へ電話をかけて、話し始めた。
もうひとりは、トランシーバーで、各所へ状況確認の報告をしている。
「現在現場には、火災の様子は無い模様。管理会社へ連絡し、管理人室の異常警報を止めるようにします」
この消防士のひとことを聞き、わたしはようやく
《火災報知機の誤作動》
と、認識したのであった。
なんじゃごるぅああああああああああ!?
朝っぱらから必死に非常階段を駆け降り、消耗した体力および水分、時間、動悸の数、そして何よりわたしの安眠を返せーーーーー!!
と心中で絶叫していた。
そしてエレベーターは依然動く気配がないため、悶々としたやり場の無い気持で、非常階段をまたとぼとぼと上へ昇って行くしかなかった。
使えない、間抜けなエレベーターが、わたしをせせら嗤っているかのように見えた。