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ステラおばさんじゃねーよっ‼️94.アイマスクの恋
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️93.202×年11月1日 は、こちら。
🍪 超・救急車
アイマスクをしたまま眠りに堕ちたカイワレは、夢の世界へつながる異空管をいつもみたいに全身でくぐり抜けた。
コネクト先は、小さな島の浜辺…。
振り返ると、朱い眼鏡をかけた萌が波打ち際に立っている。
「あ、カイワレセンセ♡」
「萌ちゃん、どうしてここに?」
「いやだわ、センセ〜!ここはあなたの精神世界の一部でシ。アタシはセンセに作り出されたマボロシぃ〜♪センセからあたし、今どう見えてまシ?」
真っ赤なビキニに派手なパレオを腰に巻く萌は、壊れたロボットのように喋りだす。
え、え、何?!
萌ちゃん、水着姿…だよな?!
それって、俺の深層心理なの?
むちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですか!
「俺、萌ちゃんに言わなきゃならない事があるんだ」
「なぁに?」
しゃがみ込む萌は眼鏡越しから上目づかいで、カイワレを見る。
豊満な乳房の谷間がくっきり強調され、目のやり場に困る。
カイワレは砂浜に視線を落とし萌に告げた。
「萌ちゃんと話していると俺、なんだかフワフワするんだ。なんでかわからないんだけど…だから!」
「だから?」
萌は立ち上がり、数歩先のカイワレへと近づき体を寄せた。
俺、今、何、言おうとしてるんだ?
夢だからって、何を言っても良い訳じゃないだろ?!
…いや、待てよ。今まで見てきた夢たちは荒唐無稽で理解不能なものばかりだった。
ならば俺の願望を夢で叶えたって、誰の迷惑にもならないんじゃないの?!
そう思い直し、真剣にカイワレは思いの丈を萌へ伝えた。
「萌ちゃん俺、久々にひとを好きになった。きみを好きになったんだ」
真顔で萌は、カイワレの告白を受け止めた。
カイワレは続けた。
「中高生の時さ、俺、女性恐怖症になったんだ。
なぜって、自分で言うのもなんだけどモテ過ぎたから。下駄箱の中には毎日山のようなラブレター…。その中には手作りのクッキーやら手編みのマフラーもあって、そのプレゼントには贈ってくれた人の身体の一部が練り込まれたり、織り込まれてたんだ」
カイワレは封印していた過去を思い出すと、息苦しくなり呼吸が乱れた。
「萌ちゃんに会った時、きみに俺ツレなかっただろ?その時の後遺症が、今でもあるんだ。でもきみは仕事の一環とはいえ、俺を懸命に看病してくれた。ああ、こんな娘(こ)もいるんだな、花の匂いもするんだなって」
萌は急に不機嫌になり、カイワレに踵を返し嘆き、罵倒した。
「わたしをそんないやらしい目で見ていたなんて…失望しました…先生のスケベッ!」
遠のいていくスーツ姿の萌に向かい、カイワレは絶叫した。
「違うんだーー!萌ーーーっ!!」
汗だくのうえ自分の叫び声の大きさに、カイワレは飛び起きた。
⭐︎
何、今の?!
どうやら音楽を聴きながら眠りこけて、短い夢で恋の告白までしていた。
カイワレは、脂汗が止まらなかった。
扉越しからは、テンション爆上がり時にどよめくあのざわめきが、ヒシヒシと伝ってきた。