ステラおばさんじゃねーよっ‼️⑤あの日、あの時、あの世界〜SNS考
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️ ⑤あの日、あの時、あの世界〜 一連の儀式 は、こちら。
🍪 超・救急車
カイワレは一連の儀式が終わると、決まってSNSに今の心境を呟いた。
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@捨てLa
言葉が今、わたしの身体から離れ、広く社会に放たれる。誰かの役に立つ事を信じて。言葉は独り立ちし、感受され、消費される。人も芸術も消費されるものだ。それでいい。
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SNSに自分の想いを呟いて、自己満足するおのれが気恥ずかしくなる。
何処ぞのカリスマ?
アーティストか何かになったつもりか?
気取りやがって。
そんな事を思いながらもカイワレは、《いいね》もほとんどつかないのに、執筆活動の報告を呟いている。
現実世界では、決して素晴らしい人格者でも無く、根暗で無名、代表作も無いただのしがないライターのくせして。
自虐も、一連の儀式に含まれていた。
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送信ボタンをクリックし、タイムラインを眺めていると誰かの呟きが目に入った。
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たまたまスクロールしていたら不快な言葉の数々が目に飛び込んできたそれを不特定多数の誰かが見た時にどう感じどうリアクションするかということについてももっとここにいるみんなで議論すべきだと思う
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ああ、またか。
カイワレは深くため息をつき、わずかな間SNSについて考え始めた。
表現の自由は、この国にはある。
SNSには、浅薄な知識、見解、噂、詐欺、フェイクニュースが氾濫し、溺れ死ぬ者が後を絶たない。
その情報源のほとんどは、普段は穏やかに社会を生きる人たちである。その一部が、ネット上では別人を演じたり、別人に豹変する。それを、ネット人格と呼ぶようだ。
匿名の仮面を被ったネット人格は、ターゲットへ言葉の刃を投げつけ、訴訟沙汰にならない限りは直接的な被害を被らない。
現実に殺人や自殺につながりかねない、おぞましい言葉が垂れ流されつづけている。
カイワレも、それを利用する人間のひとりだ。
だから同じ穴の狢(むじな)ではある。
けれど死人が出るという悲劇は、避けたい。
カイワレは、そう思いながら自身のSNS状況を顧みた。
カイワレのアカウント【@捨てLa】は、フォロワー数も少ないため、誰にも影響を及ぼさないだろうと、カイワレは勝手に思い込んでいた。
しかし影響を及ぼすかどうかは、他者が評価するものでカイワレが評価し、決めるものでもない。
言葉を駆使してそれを生業としている分、より慎重に言葉を選び、人との距離間を大切にし、SNSを利用しなければと、自省した。
それからスマホの時刻を見て、カイワレは立ち上がった。
そして厚手のジャケットを羽織り、猫背でどんよりした街へ出かけて行った。