ステラおばさんじゃねーよっ‼️101.叶糸(かないと)
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🍪 超・救急車
出版関連の諸々が落ち着いた2月下旬、カイワレは萌と2泊3日の弾丸旅行を決行した。
萌と付き合い始めてから約4ヶ月間、カイワレの出版業務に忙殺され、ふたりはデートする時間すらなかった。
仕事の合間にずっと考えていた旅先は、萌の実家のある福岡県だった。
福岡県の観光特集の雑誌記事を目にするたび、カイワレは萌が生まれ育った故郷に想いを馳せた。
「福岡には、美味しい食べものが沢山あるとよ〜!」
たまに垣間見せる萌の方言が、さらにその想いを強くさせた。
それともうひとつ、カイワレには気になって仕方ない場所がその県にはあった。
そこは、太宰府天満宮だ。
お詣りに立ち寄るついでに、どうしても手に入れたいものがそこにはあった。
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神社特有のピリっとした静謐さが、ふたりを出迎えた。
天満宮内の授与所が目に入ると、カイワレは自然とそこに引き寄せられた。
授与台には、御守りや御札、祈願グッズ等がズラリと置かれている。
その中に並ぶ、《夢守「叶糸(かないと)」》がカイワレのお目当てだった。
それは鮮やかな青糸に、梅の紋が象(かたど)られた銀のチャームがついたアクセサリーのようなもので、説明書きには、《本来学業の神様ですが、仕事の夢、プライベートの夢も叶えてくれます。「夢が叶うように」と祈りながら、手首や足首に直接付けたり、鞄、財布、スマホストラップ等持ち歩くものに結び付ける御守りです》と達筆な字が踊っている。
太宰府天満宮は、学問の神様、文化芸術の神様、厄除けの神様として菅原道真 公を祀られた神社として有名だが、《夢守「叶糸」》という御守りにカイワレは特に魅かれた。
カイワレが《家族》だと想う、各人の《夢》の成就をこの御守りに託したい…と、この数ヶ月間カイワレは密かに考えていた。
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カイワレは新作執筆のための取材インタビューをカイワレの《家族》らに打診した。
遠方に住む人や容易に会えない事情の人とは、ネット通話やメールを利用し取材する予定だ。
そして取材のお礼には、夢守「叶糸」を《家族》らに贈ろうと考えていた。
叶糸は各人の夢を叶える御守りでもあるが、カイワレと《家族》である事の証明にもしたかった。
叶糸が身体の一部に結ばれた時、《家族》の心がより強く自分の心と結ばれてほしい…という、カイワレの強めの自己満とささやかな期待をそれに込めた。
神社参拝を終え、萌にその想いを伝えると、
「仕事熱心で家族想いですね」
と穏やかにほほえんだ。
「萌も俺の《家族》だよ」
カイワレは手にした叶糸をまず自分の右手首に結び、新たな叶糸を萌に渡した。
無言で右手を差し出し、結んでほしいと萌はせがんだ。
ふたりに結ばれた叶糸の銀梅がかすかに掠った。