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ステラおばさんじゃねーよっ‼️81.グッドルーザー〜ふたりの共通点
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️81.グッドルーザー〜若森という男② は、こちら。
🍪 超・救急車
よだれを垂らし寝息を立てる若森は、少年のように無邪気な顔をしている。
カイワレと若森の共通点は、グッドルーザーであるとこだ。
誰かや何かに負けても、言い訳したり張り合ったりせず、潔くそれを受け容れる。
グッドルーザーとは、相手を負かすよりも、相手を勝たせて生きる方が心地良いと感じる人だ。
いわゆる、【いい人】なのだが、この競争社会ではその性質を評価される場面は少ない。
けれど本人らは、さほどその部分での損得を考えていない。
若森がカイワレを気に入ったのも、人や社会に対して、純真無垢な雰囲気とそのスタイルだった。
「で、これから母さんとどうなっていきたいの?」
眠る若森を揺さぶりカイワレが問いかけると、
「恋愛はなりゆきに身をまかせる主義です」
とゴニョゴニョと応える。
「なりゆきって…。あの、俺の母さんなんだけれど。この状況、理解してる?」
普段温厚なカイワレも、若森のその言いぶりに苛つく。
「そんな事言うんなら、母さんに若森さんと親しくするのやめるように言おうかな」
若森はカイワレの苛立ちをようやく感じ取り、急に姿勢を正した。
「ごめん、カイちゃん。本当は大好き過ぎて、四六時中一緒にいたいと思ってるよ」
「誰と?」
「母さんと」
「誰の母さん?」
「カイさんの。いや、カイ様の♡」
ふたたび冗談を交えてくる若森に少々呆れながらも、若森が知波を想う気持に嘘がないのは、感じられた。
グッドルーザー達のやり取りは、傍(はた)からは滑稽な雰囲気だけが満たされ、真剣な話をしているようにはまったく見えなかった。
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知波は、自宅リビングでくしゃみをした。
誰かに噂、されてるのかな?
身震いもしたので、厚手のカーディガンを羽織り、そそくさと台所仕事をしに向かった。