
ステラおばさんじゃねーよっ‼️㊼亡骸
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️㊻最期の言葉 は、こちら。
🍪 超・救急車
「死亡確認致しました。死亡時刻は22時23分です」
医師が自身の腕時計を見ながら、告げた。
そしてすぐに看護師によって、聖の顔に白布が被せられた。
「ご愁傷様です」
医師はカイワレにそう告げると目礼し、早々に病室から立ち去った。
霊安室に遺体を運ぶ前に処置をするからと、看護師から廊下へ出るよう促された。
その後の記憶は、ほとんどない。
ただただ茫然と立ちすくみ、涙が頬を伝う感触ばかりが残った。
後悔なのか、感謝なのか、寂しさなのか、それとも憤りなのか。
カイワレにとってそれがどういう意味の涙なのかは、わからない。
こんなに水分が抜けても人間て大丈夫なのかな?なんて、臨終とは別次元の事を考えている。
あれ何で俺、こんなとこに突っ立ってんだ?
立っている廊下の床下が透けて、グニャリと歪んで見える気がした。
そこへ看護師のひとりが近づいてきて、A4サイズの封筒をおもむろに差し出した。
「大根さん、これを。河愛さんの想いのすべてが詰まっているって…もしもの時は、大根さんに渡して欲しいと言われました」
看護師は他の人に聞かれないように注意しながらささやき、封筒をカイワレに手渡した。
「………」
カイワレは条件反射で封筒を受け取りながらも、看護師が何を話しているのか、自分が何をしているのか判断できない状態だった。
「本当は個人的なものを患者様から預かるのは禁じられているので、ご内密に。河愛さんにはいつも励ましてもらっていたので私、お役に立ちたかったんです。では宜しくお願いしますね」
強い眼差しで、しかし目を真っ赤にした看護師は、カイワレに一礼し去っていった。
封筒を見つめたまま、無表情でカイワレは涙を垂れ流した。
そして聖の亡骸が運ばれるベッドの後ろ姿を見送ると、やっと意識が現実に戻され、ひとりにされた寂しさが襲って来た。
それからナースステーション前にあるソファへ向かいポーちゃんとひかりの姿を見つけると、カイワレはソファまで辿り着く前にヘナヘナと腰を抜かしてしまった。
「ぅうっわあああああーん!」
ふたりはカイワレを包み抱いて、背中をさするしかなかった。
⭐︎
病棟の暗闇には深い深い悲しみが充ちて、沈黙が重苦しく息づいていた。
誰ひとり口をきかず泣き疲れ、亡骸のようにソファへ身を沈めていた。
比較的冷静でいられたひかりは、運転手に温かい飲みものを持って来るよう、チャットでお願いした。
数分後、温かい缶コーヒーを3本持って運転手がエレベーターホールに現れた。
ひかりは涙を拭いてソファを離れ、運転手から缶コーヒーを静かに受け取った。
「ありがとう。私たちは朝までここにいる事になるから。申し訳ないけど、あなたは車で休んでいてね」
運転手はひかりの泣き腫らした目を見ると、両親を亡くした頃の彼女の姿がフラッシュバックした。
エレベーターに乗り込むと、彼は目頭を押さえずにはいられなかった。