ステラおばさんじゃねーよっ‼️84.海洋散骨旅〜母子旅
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️83.ドリームキャッチャー 〜悠一朗の夢 は、こちら。
🍪 超・救急車
父・悠一朗の骨壷が我が家に戻り、あれから10ヶ月の月日が経とうとしていた。
過ぎ逝く晩夏を横目に、コンビニ前の花壇で咲くひまわりは、太陽に顔を向け凛と自立する。
そんなある日、悠一朗の海洋散骨葬を執り行うため、カイワレは知波と2人で鳥海島へ向けて旅立った。
家族旅行も母との旅行もはじめてのカイワレなだけに、不謹慎ながらその旅を楽しみにしていた。
夏の繁忙期は渡航費がかさむので、家族3人で話し合った結果、その時期は9月上旬頃と決まった。
歩は新学期からはじまる看護実習の関係で、今回の旅の参加は泣く泣く断念した。
知波は新たに働き出した病院で有給休暇の取得ができるタイミングと重なり、日程的に好都合だった。
カイワレにとっては、一石三鳥の旅となった。
なぜなら若森は、カイワレへ《海洋散骨葬》のレポート執筆を依頼し、旅費の一部は出版社持ちとなったからだ。
「いよいよだね、母さん」
「そうね。帰島は悠一朗さんの夢だったから、きっと喜んでくれるはず」
知波はいきおいで、綺麗事を口走った。
海底でなく山中に埋めた張本人が何をいまさら、偉そうに。
即座に悔いた知波の心中では、悠一朗に何度も何度も何度も土下座していた。
⭐︎
鳥海島とは、悠一朗が生前、大根一家(知波と太士朗)で帰りたかった故郷でもある。
その島へ行くには、最南端にある空港、雨美島へジェット機を乗り継ぎ、さらに船舶で南下する必要があった。
雨美島へ到着すると、近くの漁港から出ている定期船に乗り込み、さらにおよそ3時間航行して鳥海島に着くという。
ふたりはその船で、あの島をめがけた。
ひかりからは知人の小型船舶を安くチャーターするという申し出があったが、丁重にお断りした。
すでにひかりには民宿の手配で世話になっていたし、これ以上世話になり続けるのは違うと考えた。
「風が気持ちいいねー!」
船の風切り音に負けぬよう、カイワレが大声で叫んだ。
「帽子、飛ばされちゃいそう!」
負けじと知波も麦わら帽子を片手で抑え、水平線に叫んだ。
揺れる船体に身をゆだね、ふたりはただ鳥海島へ無事到着する事だけを祈った。
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