ステラおばさんじゃねーよっ‼️67.兄妹意識
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️66.白日夢〜人生最高のアップルパイ は、こちら。
🍪 超・救急車
八雄南駅へ続く線路沿いの道を、男女が横並びで歩いている。
マジックアワーで真紅に染まる空が、ふたりのシルエットをより濃くした。
「今日も来てくれて、あざま〜す!」
「いや俺もずっと気になってたんだけど、タイミングが合わなくて。こちらこそありがとね」
カイワレは、知波と会わせてくれた歩に感謝を伝えた。
「ママ、アップルパイ食べたらすぐに寝ちゃったけど、ちゃんと話せました?」
カイワレの顔をのぞくように、歩は上目づかいで見てきた。
こうやってまじまじ見ると、知波さんに似ているな…。
と言う事は、俺にも似てるのかな?
カイワレはそんな事を思いながら、歩の問いに答えた。
「うん、歩ちゃんがちょうど2階にいる時に少しだけ話せたよ」
「良かったー!あたし、実はその事ばっか考えてて〜アップルパイの味、ほぼほぼ覚えてないんだ〜」
冗談ぽく、カイワレに目配せした。
「わかりました!歩ちゃんの合格祝いは、アップルパイにする!」
カイワレがそう伝えると、
「アップルパイと〜、ほかには?!」
目を輝かせながら歩は、カイワレを追い込んでいく。
純粋に可愛らしい娘(こ)だなと思った。
そしてこの娘は俺の妹なんだ…という実感が、わき始めていた。
「他は…連絡して」
カイワレは、素気なく応えた。
歩はその反応に、満足げにほほえんだ。
⭐︎
八雄南駅の改札口で歩とわかれて、神也町駅方面行きの電車に乗った。
知波からの手紙を見るタイミングは、どうすべきか?
鞄から取り出した封筒の猫は、相変わらず無表情で手のひらの中に収まっている。
帰宅の電車内でカイワレは、ずっとその事ばかりを考えていた。
ポーちゃんとひかりさんに、連絡した方がいいのかな。
でも、なぁ……。
逡巡はやまず、いつもの癖の頭をかき出す。
封筒を手に持つ自分が、暗い車窓にぼんやりと映る。
それを見た途端なぜか、ひとりで読もう…と決心が固まった。
俺もそろそろ、ひとりで向き合っていかないと、な。
手のひらにあった封筒を胸ポケットに差し込み、カイワレは冬の夜風に吹かれ、繁華街をくぐり抜けた。
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