ステラおばさんじゃねーよっ‼️82.遺骨の帰還〜いつか行きたい島
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️82.遺骨の帰還〜父の好きな魚 は、こちら。
🍪 超・救急車
「熱帯魚がたくさんいる場所って事は、南方の離島群にある島…だったような」
知波は、悠一朗の記憶を必死に手繰り寄せている。
この国は島国だから、離島も数多くある。
「!…そういえば、いつか行きたい島があるって言ってた?!」
これについては知波にしかわからない記憶なので、思い出してもらうしかない。
「頑張って、母さん!」
と声かけしかできないカイワレ。
「ちょっと待って!スマホ地図から、その記憶を引っ張り出してみるから」
地図アプリを開き、島の名前とその位置を知波は調べだした。
隣りに座る知波のスマホをのぞき込み、彼女が思い出すのをカイワレはひたすら祈るしかなかった。
⭐︎
「えーっと確か、この島だったような」
知波が指した場所には、小さな島が列となり並んでいた。
「あっ思い出した!!」
ようやく知波はその島に辿り着いた。
「ここよ」
スマホの地図を指で拡大し言った。
「鳥海島だったわ、うん。名前に《鳥》が付くのが印象に残ってたから」
カイワレはすぐに自分のスマホで、《鳥海島》を検索し、それにまつわる記事を読みだした。
「この島には、【人魚伝説】があり、魚の尾鰭(おひれ)がついた生物を神とし祀り、その生命に感謝し、島人と共生したとの言い伝えがある、か…」
ふたりは顔を見合わせ、同時に言葉を発した。
「この…」
「だったら…」
ふたりは失笑し、カイワレは知波が先に話すよう促した。
「この島、鳥海島には悠一朗さんの大好きな熱帯魚がたくさんいるだろうし、この近海に悠一朗さんの骨の一部を帰したら、どう?」
カイワレもうなずきながらほほえみ、
「俺も母さんとおんなじ事、考えてた」
と言い知波を見つめた。
知波は虚空を見上げ、呟いた。
「きっと喜ぶだろうな、悠一朗さん」
「そうだね。喜んでくれたら嬉しいね」
ふたりはそれぞれの悠一朗の像を思い浮かべ、
早く、会いたい!
と逸る気持ちをおさえていた。
⭐︎
遺骨引取人のカイワレは諸々の手続きを終え、ようやく悠一朗の遺骨が入った骨壷と葬儀に必要な「死体検案書」を担当者より丁重に受け取った。
「色々、ありがとうございました」
警察関係者らに挨拶し、深々とお辞儀をすると、ふたりはその場から離れた。
《海洋散骨葬》について、調べなければ…。
カイワレも知波もぼんやりとだが、次にすべき行動に思いを巡らせた。