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ステラおばさんじゃねーよっ‼️72.墓前にて②〜満開の桜の下で-1〜

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️71.家族シミュレーション は、こちら。



🍪 超・救急車


3月下旬、某日。ーーー

聖 初彼岸のお墓参りとお花見を兼ねて、あの丘で5人は集結した。

春の陽射しが、桜をふうわり輝かせていた。

御通夜から逃げ帰ったのがずっと心残りだった知波は、ひとり喪服姿で参加した。

「はじめまして。小鳥遊 知波と申します。宜しくお願いいたします」

深々と頭を下げると、ポーちゃんは早速、知波に謝罪した。

「その節は、不躾に追いかけてしまい申し訳ございませんでした。僕、犬村 詩と言います」

「犬村さん…いえこちらこそ。まさか太士朗…いや、カイワレさんがあの日喪主のように斎場で振る舞う姿に気が動転してしまって…申し訳ございませんでした」

「太士朗って、呼んであげてくださいね」

ポーちゃんはにこやかに知波へ伝えた。

「そして…」と知波の隣りにいた娘を紹介しようとすると、

「小鳥遊 歩です。たい兄の妹です」

と自ら名乗った。

「あら、この方が歩さん?はじめまして。わたし神林 ひかりと申します。犬村の許嫁になります」

「わあ、素敵ですね!いつご結婚されるんですか?」

「今年の10月に、式を挙げる予定です」

「たい兄にも早く彼女ができたらいいのに」

と歩が呟くと、カイワレの顔はみるみる真っ赤になっていった。

「それでしたら、うちのブライダルカウンセリング会社を紹介しましょうか、たいしろうさん?」

いつものように微笑むひかりが、カイワレを見て言った。

「じゃあ、お願いします!」

と大声が丘に響き渡ると、皆大笑いした。

⭐︎

自己紹介が済み、それぞれの想いを胸に河愛家の墓碑へ手を合せた。

カイワレは聖へー
知波母さんと出逢い、かわいい妹ができて幸せです!

と報告した。

知波は聖へー
最期を看取れなくてごめんね。そして、太士朗にふたたび出逢わせてくれてありがとう!

と謝罪と感謝を涙で伝えた。

ポーちゃんは聖へー
先生姉妹が引き起こした珠玉のミステリーには感服しました!聖先生、昂奮をありがとう!!

と【母さがし】の感想を述べた。

ひかりは聖へー
今度来る時は、わたしのウェディングドレス写真をお持ちします!

と誓った。

歩は聖へー
ママのお姉ちゃん、はじめまして!これからはわたしとたい兄で、ママを守っていくよ!

と約束した。

⭐︎

お墓参りは一段落し、聖の墓碑の隣りに皆で大きなブルーシートを敷いた。

ようやく満開の桜の花にも目を向ける余裕が生まれた。

ブルーシートへ真っ先に座り、上を見上げた歩が、

「キレ〜イ!まるで聖さんも喜んでくれているみたい!!」

と純真無垢な感想を言い放った。

「いつもならその第一声は、僕の役目だったのに…」

ポーちゃんは歩と真剣に張り合うかのように、口を尖らせ言った。

そんなふたりを見るカイワレとひかりと知波は、小さく笑っていた。

⭐︎

「この日のために、我が家のシェフらに腕を振るってもらいました!どうぞお召し上がりください!」

「我が家のシェフって…もしや、お正月のあのおせちって…」

歩はひかりに訊ねた。

「あ、気づいちゃいました?」

と舌を出し、上品な微笑みをたたえるひかりは、歩へ取り皿を渡した。

「ありがとうございます!ガチウマおせちでした!!ひかりさんち、ガチスゴですね」

そう歩が応えると、ひかりは首を横に振り言った。

「産まれてくる場所は、誰にも選べないわ。だから産まれた場所で《自分らしく》どう生きたいかを、考えるしかないのよね。わたしは、歩ちゃんがうらやましい!」

「そっかなぁ」

歩はキョトンとした顔で応えた。

「だってこんなに素敵なお母様とお兄様が生きてらっしゃる。わたしにはどう望んでも、手に入らないから」

そよ風に舞い降る桜を見上げると、ひかりはそれに向かい、そっと手のひらを差し出すのだった。

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