ステラおばさんじゃねーよっ‼️⑨くろけっと

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️ ⑧母娘（おやこ）の絆〜 猫キャラアイコンと娘 は、こちら。

🍪　超・救急車

情報番組での星占いの一節、

《気になる相手には、積極的になってみて！》

そのアドバイスが特に、知波の記憶に残っていた。

その一節を見てからずっと、知波は例のSNSでの猫キャラアイコンばかりが目の前でちらついていた。

いつも以上に、その相手のテリトリーへ踏み込んでみたい。

そしてわたしのアカウントを、いやわたし自身をもっと、認識してほしい。

そう思ってしまった。

気づけばその想いは、増幅の一途。

《承認欲求》が止めどなく湧き上がり、その人へ自身の想いと提案を綴っていたのだ。

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@捨てLa
《夢感覚日記》今日の夢も何も覚えていない。ただ懐かしいものに触れられそうで触れられない…そんな感覚だけが残る、後味悪い夢を見た。何度も定期に見ている（だろう）夢。とにかく起きた時の寝醒めの悪さ。どうにかならないものなのか。
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@くろけっと
　わたしもそんな感覚的な夢、しょっちゅう見ますよ。わたしの場合、全体的にor断片的に夢を覚えていたり全く覚えていなかったり。もし良かったら、わたしの夢を買い取りませんか？w
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「返、信っ！」

勢いづいていたとはいえ、かなり大胆で強引なリプライをしてしまった。

後悔はなかったが、時間が経つにつれ、知波は若干気恥ずかしい気持になった。

このリプライに対して、@捨てLaさんはどんな反応をするのだろうか。

なんだかそわそわしてきたので、一旦そのサイトから退出し、知波は家事に没頭しようとした。

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今週は深夜勤務シフトで、今朝はちょうど夜勤明けであった。

自宅から自転車で5分以内の市立病院で、知波は看護師として勤務している。

夜勤明けの場合、早朝5時まで勤務し、引継ぎや着替えをし、帰宅は6時頃。

そこから、歩の朝食とお弁当の準備をする。

通常、夜勤明けの午前中にはその流れで、家の片付け、洗濯、水場の清掃をする。そして歩が帰宅前の夕方頃まで、睡眠をとるようにしている。

ついさっき大胆なリプライをしてしまったせいで、昂揚感に拍車がかかりハイな状態で家事をこなしていた。

結局、頭の中ではずっと《夢感覚日記》の事ばかり、考えていたのだ。

今日だけではない、気づけばここ数日、ずっとこの調子なのだ。

何故なのか《夢感覚》というワードに惹かれ、またその夢自体を覚えていない【その中の人】に興味を覚えた。

それからは、夢にまつわるさまざまな情報をネットや雑誌・書籍等で、かたっぱしから調べるようになっていった。

そしてついに、《夢を買い取る》という逸話にたどり着いた。

鎌倉時代には既に《夢の買い取り》は存在していて、北条政子が腹違いの妹の吉夢を引き受けて、当時の天下人である源頼朝の正妻となり、将軍二子を授かった、と【曽我物語】には記されているようだ。

昔は、【どんな歴史も、権力者の都合によって書き換えられるのが常】だったとも言われている。

まるで、現在を取り巻くインターネット上のフェイクニュースのように。

知波はこのエピソードを知り、@捨てLaさんに《夢の買い取り》の申し出をしたくなってしまった。

覚えていない夢ばかり見ているのならば、わたしの書きためた夢を買い取ってもらい、その夢で幸福を呼び込んでほしい、と思ってしまったから。

《夢の買い取り》と言っても、知波は金銭を要求したい訳ではなかった。

どうやらわたし、不思議な《夢感覚日記》を呟く@捨てLaさんと仲良くなりたいんだな…。

ああ、家事に集中出来ない！

恋する少女のようにスマホを頻繁にのぞき、例のアプリからの通知をいまかいまかと待ちわびる、普段とは違う知波がいた。