ステラおばさんじゃねーよっ‼️54.警告夢〜逃亡中
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️53.衝撃からの決意 は、こちら。
🍪 超・救急車
はあはあはあはあはあ
知波は喪服で、自転車を漕いでいる。
「多分あの子、あんたを探すと思う」
聖の声が追いかけてくる。
「はあ、はあ、探す?わたしを?なんで!?」
その声から逃げるため、必死に速度を上げていく。
「あんたが産んだ子なんだからわかるでしょ?」
後ろをふり向くと、声の主である聖がカイワレの姿と重なり、知波に追いついてくる。
「お母さん、ですか?」
記憶の中のカイワレの声が、ハウリングする。
「知らない!何も知らない!」
はあはあはあはあはあはあ
知波は必死に頭を振り、自転車を漕ぐ脚も呼吸も、最高潮に達していた。
心臓が破裂しそう!!
ーーそこで目が覚めた。
「はあっはあっ…はぁぁまさかの…夢オチ…」
⭐︎
今宵は上弦の月で、薄っすら雲にまとわりついた黄金の爪型がぼやけて浮かんでいた。
夜勤中にも、何度も何度もカイワレの顔がちらついて離れない。
いつも以上に夜勤前半は仕事に身が入らず、そんな自分を叱咤しながら何とかこなしていった。
休憩室の机上に身体を預けると、浅い眠りで疲弊していた知波は、すぅっと意識が遠のいていった。
⭐︎
そこは真っ白な壁に囲まれていて、扉も窓もない正方形の部屋だった。
誰もいない室内で、知波はなぜか全裸だった。
すると、部屋とともに肉体も歪んだ。
しばらくすると部屋は元に戻ったが、知波の髪の毛がハラハラと滑り落ち、やがて歯もポロポロと抜け落ちてしまった。
山姥(やまんば)のような姿になり、さっきまで白壁に取り囲まれた部屋の壁は、いつしか全面が鏡になっていた。
見すぼらしく、見るに耐えないおのれの姿を見た知波は、わざわざ大きく口を開けてみた。
すると、その舌は顔全体をひと舐めできそうな長さで2枚に割れており、ウネウネとうごめいている。
にやり、とあざける自身の姿は、バケモノそのものだった。
舌が何かに絡み付き必死に取ろう、取ろうとすれば、汗が毛穴から一気に噴き出した。
その生ぬるい感触が寝汗だと感じ、知波は小さな短い声で叫んで飛び起き、また肩で息をしていた。
同時にスマホのアラーム音が鳴り、静かな休憩室に響き渡っていた。
「仕事に戻らないと…」
知波は寝汗のせいで少し寒気がして、ロッカーから厚手のカーディガンを取り出した。
それを羽織りながら、何も考えたくないほどの気だるさを引きずり、ナースステーションへ戻って行った。