ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉗渾沌〜初対面
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🍪 超・救急車
@くろけっとさんと会う金曜日が訪れた。
今週は特に目立った仕事もなく、カイワレは読書をしたり、映画を観たりして時間をつぶした。
あの後何度か、@くろけっとさんとDMで連絡を取り合い、13時に新軸駅 西南口にある裸婦像の前で待ち合わせの約束をした。
待ち合わせ時のカイワレの特徴として、黒のトレンチコートと厚手のワイドパンツ、黒のタートルネックセーターに黒縁眼鏡…といった全身黒ずくめのいでたちであるのと、長身である事を前もって知らせた。
@くろけっとさんは、キャメルのカシミアコートに黒のスカートで、茶色のロングブーツを履き、赤い革バッグを肩から掛けて来るそうだ。
そして今日、約束の時間の5分前には到着し、肌寒そうな裸婦像の台の横で、カイワレはうつむき加減で待っていた。
すると後ろから女性の声が聞こえてきた。
「捨てLaさん?ですか?」
顔を上げると、ショートボブの髪型をした、40代前半くらいの女性が目の前に立っていた。
「……くろけっとさん、ですね?」
「そうです。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく…お願いします」
とカイワレはたどたどしく声を発した。
「教えてもらってましたけど身長、本当に高いんですね」
「はあ、そうですね…。早速ですが、行きつけの喫茶店が近くにあるのでどうですか?」
慣れない取材と人見知りというのもあり、ゆっくり話せて、落ち着く空間にカイワレは早く逃げたかった。
「今日寒いですもんね。そこに行きましょ」
目は合わせないしこもりがちの声のカイワレを察してか、知波もカイワレにとりあえず同調した。
勝手に歩き出すカイワレに、知波は何も言わずに後ろをついていった。
知波は少し拍子抜けしていた。
20くらい歳の離れた人だなんて思いもよらなかったからだ。
歳の差を意識し始めると、あのSNSで今まで見せてきた@くろけっととしての言動が思い出され、今にも顔から火が噴き出しそうで逃げたくなった。
けれどやっとの事で直に会えたのだから、この状況を楽しまないともったいないな、と思い直した。
カイワレは一目散に、その喫茶店を目指した。
北風が強く吹くたびに、薄手のトレンチコートを着て来たのを悔やむカイワレだった。