
ステラおばさんじゃねーよっ‼️㊺危篤
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🍪 超・救急車
「美味ちい♡」
苺をポーちゃんに取られても、こんな満足げな顔を見せられると何も言えない。
「本当にこのショートケーキは絶品!」
ひかりにはフランス帰りのお抱えパティシエもおり、洋菓子に対する舌も肥えている。
だがポーちゃんの好きなケーキ屋で買ったものを、ポーちゃんと一緒に食べるから絶品なのだろう。
幸せそうなふたりとは対照的に、カイワレはまた気持が沈んでいった。
「それでたいちゃん、お母さんが見つかったのに悲壮感満載なのは何で?」
2切れ目のケーキを口にもぐもぐやりながら、ポーちゃんは真面目な顔でカイワレを見た。
「実はね、探していた母親とすでに出逢っていた…みたいな」
「ええっ!?」
ポーちゃんとひかりは、同時に顔を突き出した。
「いやいやいやいやいや、どこでよ?!︎」
ふたりは驚きを隠せず、口が半開きだ。
カイワレはほぼ母親と確定した知波や、その娘である歩について話し始めた。
⭐︎
「SNSで記事ネタの提供者と会ってみたら、実の母親だった…って新世代タイプの小説だね、いやドラマだね、その実写化だね!」
ポーちゃんは妙に興奮し、自分が映画監督になった気分で腕組みした。
「多分自分の力だけじゃ、探せなかったと思う。母親の下の名前まで変えてあったんだから。ひかりさんとあの探偵さん、さすがですね」
「良かったです。ブラックがお役に立てて」
ひかりは普段通りのほほえみで、カイワレに言った。
「あとは僕らの出る幕じゃないから、たいちゃんがどうするか決めたらいいよ」
ポーちゃんはカイワレを兄のように慕っていても、カイワレの母親を自分の母と思う事はない。
母親が生きているカイワレをどうしても羨ましく思ってしまうのを、なるべく笑顔の裏に隠しておいた。
「これからも仕事で会わなきゃなんだけど、どんな顔して会えばいいか正直今はわからない。捨てられた事や改名した経緯とか、どうして?って、なるから」
カイワレは不安に満ちた顔を、両手で覆った。
すると見知らぬ電話番号から、カイワレのスマホに着信が入った。
カイワレは怪訝そうに電話を取り、「もしもし」と無愛想に応答した。
「八雄市総合病院の穐山と申します。大根 太士朗さまの携帯電話でしょうか?」
【八雄市総合病院】の言葉に反応しカイワレは通話をスピーカーフォンに切替え、ポーちゃんとひかりにも聴けるようにした。
「河愛 聖さんをご存知ですか?」
「わたしの、伯母だと…伯母です」
「河愛さんは現在危篤状態です。緊急時には縁戚の大根さまへご連絡差し上げるよう、河愛さんより依頼がありました。なるべく早くお越しいただけませんか?」
相手側は一方的に通話を終了したが、スマホを見つめたまま放心しているカイワレがいた。
その話中ひかりは、この家から近場に待機している運転手へ通話をし始めた。
「一緒に行くよ!」
ポーちゃんはサンタの帽子を脱ぎ捨て、バタバタと着替えに行った。
その声で我に返ったカイワレは、一刻も早く八雄市総合病院へ向かう事だけを考えた。