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ステラおばさんじゃねーよっ‼️83.ドリームキャッチャー 〜悪夢除け

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️82.遺骨の帰還〜いつか行きたい島 は、こちら。




🍪 超・救急車


知波が流した熱い涙を、カイワレが頬で受け止めたあの朝から、カイワレは《夢の記憶保持》ができるようになった。

理由はまったくわからない。

おそらく知波の涙が、カイワレの見た夢を閉じ込める機能を刺激し、動かしたとしか考えられない。

理由はどうあれ、《夢の記憶保持》ができるようになった喜びをカイワレは深く噛みしめていた。

最近では夢記録するのも日常茶飯事となり、数10年以上真っ白だったカイワレの夢記録用ノートは、万年筆の文字で真っ黒に埋めつくされている。

いまやカイワレは、ドリームキャッチャー(夢の捕獲者)だった。

⭐︎

話は1ヶ月ほどさかのぼり、若森からカイワレの引越し祝いをいただいた。

「部屋を整理してたら、出てきたんだけど」

と前置きし、若森はそれをプラプラ揺らしながら話しだした。

「これ、俺が10年くらい前にアメリカで放浪旅をしていた時に買った《ドリームキャッチャー》!一見、蜘蛛の巣みたいだよね。これね、アメリカ北部の少数民族が受け継ぐ伝統的な魔除けらしく、子どもの悪夢除けでもあるんだって。ずっと夢見が悪い、というか夢自体を見ているのになぜか覚えてられないんだよね?」

ニカッと笑い、若森はカイワレの目の前にそれを差し出した。

受け取る前に、カイワレは若森に反論した。

「最近は、治りましたよ。母さんや歩と暮らし始めた頃には」

「へえ、それは良かった!でもねこれ、ネット販売している代物とはまったく別物なんだよ」

「どう違うんですか?」

ニヤつきながらも誇らしげな若森の表情を見て、カイワレは軽くイラッとした。

「なんと!これはその少数民族が作った、正真正銘のドリームキャッチャー!!らしい」

「へー」

手に取ってよく見ると、何かの木枝を曲げた輪に、糸が張りめぐらされている。

それはまさに、獲物を待ち受ける蜘蛛の巣のような造型だ。

カイワレはそれについて、すぐにネット検索してみる。

すると若森が言うようにそれは、

【蜘蛛の巣に見立て悪夢を捕らえ、侵入を防ぐための魔除けの御守】

と書かれている。

古ぼけ、くすんだドリームキャッチャーに、どこか哀愁も感じる。

「騙されたと思って、寝床に飾ってみてよ!おそらく楽しい夢だけ見られるようになるからさ」

そう言うと若森は、カイワレの手のひらにそれを強引に握らせたのだった。

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