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ステラおばさんじゃねーよっ‼️64.密談
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️63. 身元判明 は、こちら。
🍪 超・救急車
「歩、ちょっと座ってもらえる?」
「うん」
ダイニングテーブル越しに対面した知波は、体調不良で今日から3日間仕事を休む事を、歩へ告げた。
黙って歩は、耳を傾けていた。
「そういう訳だから、よろしくね」
「......ねえ、カイワレさんと連絡、取ってる?」
歩はおもむろに、口火を切った。
「全〜然!」
力ない笑顔で、知波は応えた。
「なんで取らないの?この前のお礼の返信もしてないんでしょ?」
黙ったまま、知波はうなずいた。
「いい?今、ここでカイワレさんのメールを開いて。わたしには見せなくていいから」
しぶしぶ、知波は歩の提案を聞き入れた。
そのメールを見た途端、知波の血相はみるみる変わっていった。
「歩、ごめん。ママ、気分が良くないから自分の部屋に戻るわ」
そう言うと歩を残し、そこから離れた。
「ちょっ…ママ!」
歩はカイワレにメールを送り、ふたりの密談が始まった。
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@kaichan
ママ体調不良で病院を3日休むみたいです
わたしも春休みで家にいます
@ayumu(╹◡╹)
連絡ありがとう!
早急に色々話をしなければならないから、急なんだけど明日お邪魔できるかな?
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【OK】スタンプがすぐに送られてきて、さらに続けた。
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@kaichan
ママには内緒にしておきます
何時頃来ますか?
@ayumu(╹◡╹)
朝9時には着けるようにしたいです。
早いかな?
@kaichan
わたしは大丈夫です
ママが逃げないように見張っておきます笑
あ、カイワレさんのメールはわたしの前で開いてもらいました
内容は、見てないけど
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ありがとう、よろしくお願いします!とカイワレは返信し、密談は終了した。
こうして明日9時に、カイワレは小鳥遊宅を再訪する事になった。
⭐︎
知波は決して開けてはならぬパンドラの匣を、とうとう開けられてしまった…と、自室で泣き崩れた。
薄々、いや、とっくに気づいていた。
カイワレさんは、わたしが捨てたあの子で、太士朗なんだ、と。
けれどわたしは、SNSで彼を見つけ、恥ずかし気もなくアプローチした。
その時はまったく知らなかったとはいえ、なんと愚かな事をしたもんだ。
もう二度と会わないと、誓ったのに。
そう思うと自分の馬鹿さ加減に嫌気がさし、泣き笑いするしかなかった。
けれど、もう逃げられそうにない。
腹をくくり、すべてぶちまけるしか方法はないのか。
それにしても、歩には過去の事を知られたくはない。
この一件では、彼女は無関係だから。
どうすべきか。
…手紙にしたため郵送し、カイワレだけに真実を伝えるのが最善の手段か…。
聖は鏡台に座り、そのひき出しから便箋を取り出した。
向き合いたくない最悪な過去を振り返りながら、知波はやむなくカイワレへ手紙を書き出した。